February 01, 2022
●飛距離を増してスコアを減らす
ゴルフ仲間の一人(アメリカ人)が私にこう云いました。「あんたはわれわれのグループの一番の飛ばし屋だ」と。「ええっ?」私はその間違いを正そうとしました。私より飛ばす人は何人かいるからです。その男は続けました、「ポンド当たりではあんたが最も飛ばすよ」 と。背も高く筋肉モリモリで体重180〜200ポンド(80〜90kg)級がぞろぞろいる中で、身長164センチ、体重50kgの小兵の私が、アメリカ人たちに負けず劣らずのティー・ショットを放つのは確かに驚異かも知れません。しかし、私としては体重当たりの飛距離では不満で、彼ら以上に飛ばしたいと思っているのです^^。
飛距離を伸ばす方策はいくつもあります。
1) 「身体を鍛えてスコアを減らす」(tips_200.html)で紹介した手・腕、足腰、肩などの鍛錬によってパワーをつける。
2) 身体を柔軟にする体操によってスウィング・スピードを増す。
3) レイト・ヒットのテクニックをマスターする。
以上はどれも日々の運動や猛練習が必要です。それらはインスタントな妙薬を期待している怠惰なあなたには相応しくないでしょう^^。そこで、私自身が経験によって得た、簡単かつ霊験あらたかな方法だけを選りすぐってお伝えすることにします。
○ スウィート・スポットで打つ
糸巻きボールとパーシモン・ヘッドの時代に300ヤードを放っていたプロGeorge Bayer(ジョージ・ベイヤー)は次のように云っていました。《ボールを遠くに飛ばしたいなら、ハードに打つのではなく、(スウィート・スポットで)正確に打て》
いくらクラブヘッド・スピードが速くても、スウィート・スポットで打たなければ満足な飛距離は得られません。トゥで打ったりヒールで打ったりすれば、プロだって数10ヤードは距離を損います。クラウンで打てばポップアップして目の前のレディース・ティーに着地するだけです。また、どれほどパワーがあっても、スウィート・スポットで打たなければボールは正しい軌道で飛びません。
スウィート・スポットで打っているか自己診断するには、ゴルフ用品店で「インパクト・シール」あるいは「インパクト・マーカー」などを購入するか、粉末タイプの「水虫スプレー」をクラブフェースに噴霧することによって、クラブのどこでボールを打っているかを分析します。
実際にはスウィート・スポットで打つには、そう簡単とは云い切れないいくつかの条件があります。
a) スウェイしない。
b) スウィングの間中、頭を上下させない。(左右への僅かな動きは可)
c) 左腕を伸ばしたインパクト。(手首も真っ直ぐでなければならない)
d) 頭を残してフォロースルー。
「飛ばそう!」と欲張ったり、方向を無理矢理制御しようとしなければ、高い確率でスウィート・スポットで打てます。「飛ばそう!」と力むから身体が上下左右に揺れ動き、それにつれて頭も動き手首も曲がったりします。単にアドレスした状態に戻すインパクトを心掛ければいいのですが、当てに行ったり人為的に方向をコントロールしようとするため、手が縮こまったり、手首をこねたりする余計なアクションが生じます。遠心力と重力に任せたインパクトを目指すべきです。
私は、御覧の写真のカナダの異才Moe Norman(モゥ・ノーマン)のように左手を一杯に伸ばしてアドレスします。スウィングの間に左肘を曲げなければ、クラブフェースの中心が必ずボールに戻る筈です。この手法は長期にわたって私にストレートな弾道をもたらしてくれています。
スウィート・スポットで打つためには、もう一つ大事なことがあります。ドライヴァーのトゥ寄りでアドレスすることです。「インパクトの物理学(トゥ寄りでアドレスすべき理由)」(tips_175.html)をお読み下さい。練習場でのテストの結果、私はドライヴァー・ヘッドに記されている目印の2センチほどトゥ寄りに赤いビニール・テープを貼り、そこでアドレスして打っています。ここでアドレスすると、スウィート・スポットで打てるのです。
○ イーズィにスウィングする
年に一度の市のシニア・トーナメントを控えた前日の練習ラウンドで、私は大振りしたり、力んでスウィングして肩や腕を疲れさせるのは得策ではないと考え、No.10のティー・グラウンドからは、バシーっ!ではなく単にスコーン!と打つことにしました。
驚いたことに、力んで懸命に打ったドライヴァー・ショットより遥かに飛び、方向もフェアウェイのド真ん中でした。バシーっ!ではなくスコーン!と打ったティー・ショットはNo.11、(No.12はアイアンで打つPar3)No.13、No.14、No.15、No.16、No.17、No.18と、日頃の平均飛距離を5〜15ヤードも超える地点に届きました。
PGAプロ(インストラクター)のDr. Gary Wiren(ゲアリ・ワイレン博士)は、「指の中で最も弱い左手の最後の三本の指を鍛えること。手で握り締める運動器具を手の届くところ(TVやコンピュータの前など)に置いて、暇さえあれば用いるように」と云っています。それは馬鹿力でクラブを強く握るためではなく、強く鍛えた指で軽くグリップするためだそうです。彼は次のようにも云っています。《ゴルファーは強靭であるべきだ。目一杯引っ叩くためではなく、イーズィにスウィングするために》
イーズィにスウィングすればスウェイもオーヴァー・スウィングにもならず、身体のどこにも強ばりは生じません。ダウンスウィングで重力と遠心力のままに伸ばされた左腕はきちんとアドレス時の位置に戻るでしょう。イーズィにスウィングすることは、スウィート・スポットで打つ最大の基盤となります。スウィート・スポットを欠いては、どんなショットもミス・ヒットでしかなく、最長飛距離には結びつきません。
○ 左脇を締め挙げる
これは、少年野球のコーチをしているMichael Witte(マイケル・ウィット)が発見した理論です。彼はメイジャー・リーグのホームランバッターたちのスウィングを分析し、隠れた共通点を発見しました。そしてそれは、ゴルフ・スウィングにも利用出来るものでした。
「並のゴルファーは早めに右手首のコックを解(ほど)いてしまう。すると左腕だけが余りにも早くインパクト・ゾーンに突入してしまい、右腕が追いつけず伸び切れない。そこで並のゴルファーは左腕の動きをストップさせ右腕の到着を待つことになる」
上のような動作はチキンウィングに他なりませんし、インパクト・ゾーンで左腕の動きを止めて飛距離増を望むのは無理というものです。
ボールにパワーを与えるには、インパクトからフォロースルーまで(クラブヘッドがターゲットを指す段階まで)左右の腕を伸ばし切る必要があります。そのためには《両腕が右腰の上に近づく段階で左脇を締め、インパクト直前に左肩を挙げてすぐさま飛行線後方に引く》というのが彼が発見した飛ばしの原理です。【詳細は「左脇を締め挙げろ」(tips_94.html)をお読み下さい】これは、さして難しいメソッドではありません。そして実際に飛距離に結びつくのです。
私がこのメソッドを利用し始めた頃、普段は常に数10ヤード置いて行かれる強打者の友人の飛距離に徐々に肉薄し始めました。彼は私を侮れなくなり、焦った気配が濃厚でした。われわれは云わず語らずのうちの飛ばしっくらをすることになりました。
「左脇を締め挙げろ」には次のような効能があります。
a) 「左脇を締め挙げろ」を実行すると、インパクトで否応無く左手が伸びます。それはアドレス時のクラブヘッドの位置に完全に戻ることを意味します。スウィート・スポットで打てる要因です。
b) 「左脇を締め挙げろ」を実行すると、自然に"stay behind the ball"(頭をボール後方に留めよ)を達成出来ます。インパクトでターゲット方向に身体がスライドすると、その動きは発射角度を低くし、スピンを増やしてしまいます。昔、「左の壁に向かって打て」と云われましたが、それに似ているとも云えます。
c) 砲丸投げのように、全身を使ってクラブヘッドを抛り出すスウィングが可能になります。エネルギーを最大限ボールに伝え得る動作です。
この方法が効験あらたかであることを証明する実話:「左脇を締め挙げろでドラコン二つ」
「左脇を締め挙げろ」をこの『日記』で紹介した直後に、ある日本の女性ゴルファーがお便りを下さいました。
この方のそれまでの平均飛距離は190ヤードだったそうですが、「左脇を締め挙げろ」の練習をしたら平均200ヤードに伸び、数日後の女性62名が参加したコンペのドラコンでは午前の部で210ヤード、午後の部200ヤードで両方の賞を独り占めされたそうです。ドライヴァーの飛距離のお蔭で、パー4のホール全部の第二打を(ウッドやハイブリッドではなく)アイアンで打つことが出来、ハーフ初の30台も達成されたとのこと。たった一度の練習で最高20ヤードも飛距離を伸ばされたのです。
上の実話が証明する通り、《インパクトで左脇を締め挙げろ》は間違いなく飛距離増に繋がります。数ヶ月の鍛錬も筋肉増強剤も新しいドライヴァーも、一切不要。超簡単。お試し下さい。
もう一つ、「先行捻転で飛ばす」(下記リンク)という飛ばしの策があるのですが、これには練習が必要です。
【参考】
・Moe Norman(モゥ・ノーマン)のスィング (tips_195.html)
・左肩を挙げよ (tips_199.html)
・20ヤード増への最短コース (tips_129.html)
・先行捻転で飛ばす (tips_161.html)
・先行捻転・再履修 (tips_195.html)
【おことわり:写真はhttps://fwtx.com/downloads/、http://moenormangolf.com/、https://www.womensgolf.com/にリンクして表示させて頂いています】
(February 01, 2022)
●アドレス時の背中の角度(改訂版)
'Anatomy of Greatness; Lessons from the Best Golf Swings in History'
by Brandel Chamblee (Simon & Scuster, 2015, $30.00)
Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)は、PGAツァーで四勝したプロで、現在はThe Golf Channel(ゴルフ・チャネル)のメインの解説者です。この本はスウィングの最初からフィニッシュまでを世界の名人たちの写真やヴィデオを研究し、最大公約数を導き出してまとめたものですが、これにポスチャーについて書かれた一章があり、「なるほど!」と思わされると同時に、以前に公開した記事は間違っていたと反省しました。で、前の記事は削除し、図版も手直しし、ここに改訂版をお届けする次第です。
「背を丸めずに真っ直ぐ伸ばすアドレス(上図の右から二番目)は最近教えられている一般的ポイントであり、ツアー観戦に行くとほぼ全てのプロが棒のように真っ直ぐな背中をしてアドレスする。これは見た目には魅力的かも知れないが、これは私に云わせれば矯正過剰というものだ。
背の上部を真っ直ぐにしようとすると、背の下部が過度に凹み易い。この背骨を真っ直ぐにしようという上部と下部の綱引きは、あまりにも多くの緊張を生み出す。それはスウィング後半を短くするのはもちろんのこと、バックスウィングの開始に当たってわれわれが必要とする滑らかさを得ることをほぼ不可能にする。
ゴルフのビッグ・イヴェントに優勝した人々に共通する一つの分野があるとすれば、それは背骨の下部が中庸かあるいはやや凹んでいて、背骨の上部がカーヴしたアドレスである。背中上部は自然に僅かな角度でカーヴする(上図右端)。ボールに向かって上体を傾げると両腕は身体の前に自然に垂れ下がり、クラブを保持した両手の上腕はリラックスして胸の上に位置する。これが正しく行われると無数のポジティヴな累積的効果が得られる。
切り返しの際、背の上部は一時的に身体を拡張して、一度に二つの方向に動く。アドレスで背中をカーヴさせていれば、投球を開始する前の野球のピッチャーと同じようにリラックスしている筈だ。これはリラックスした位置から切り返しの拡張へと推移する動きであり、スウィングにおける運動能力の神髄である。
もし背の上部を頑なに真っ直ぐ伸ばし、腰を過剰に凹ませたスウィング開始をすると、正しい時点での胸の膨張という恩恵に与れない。その恩恵とは連続的なパワーの増加と、正しい動作の結果である滑らかさである。
ゴルフ名誉の殿堂は前屈みアドレスをした人々で一杯である。今日の過剰に背を真っ直ぐ伸ばしたポスチャーは“完璧”に見えるかも知れないが、この場合完璧に見えない方が実際には完璧なのである」【写真左はSam Snead(サム・スニード)、右はJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)】
写真左のやや背を丸めたTiger Woods(タイガー・ウッズ)のポスチャーは彼がメイジャー・トーナメントに四連勝した時期(2000〜2001年)、写真右の背を伸ばし頭を上げたポスチャーは最低の時期(2017年)だそうです。
【参考】Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)の 左踵を上げてスウィング(tips_169.html)
【おことわり:写真はhttps://golfdigest.sports.sndimg.com/、https://pbs.twimg.com/、https://cdn.mos.cms.futurecdn.net/にリンクして表示させて頂いています】
(January 20, 2022)
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