July 17, 2021

Dave Pelz(デイヴ・ペルツ)のバウンス詳説

 

なぜこの本を先に読まなかったんだろうと思わされたのがショート・ゲーム専門インストラクターDave Pelz(デイヴ・ペルツ)の本です。彼のバンカー・ショットの技法はこれまでに紹介したものとさほど変わりませんが、彼はウェッジの構造とクラブ選択について非常に詳しく解説しています。

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'Dave Pelz's Short Game Bible'
by Dave Pelz with James A. Frank (Broagway Books, 1999, $30.00)

Dave Pelzの説明を、私のウェッジを例にして述べてみます。図の点線(リーディング・エッジの最下端)からどれだけ下に膨らんでいるかをバウンス(=フランジ)と呼びます。左の52°GWとその右隣りの56°SWは、見た目の違いからバウンスも大きく異なるように見えますが、実際に異なるのはロフトだけで、点線から赤線までの距離は全く同じで、バウンスはどちらも9°なのです(私は二つのバウンスは違うと思っていたので、クラブのスペックを調べて驚きました)。

真ん中とその右はどちらも56°サンドウェッジです。右のSWのバウンスは不明ですが、多分6°〜9°です。二つの大きな違いは、右のSWは前から見た底部の深さ(青線)が浅いバウンス、真ん中のSWは底部の深さ(青線)が深いバウンスであること。バウンス底部が深いとソフトな砂にめり込まずに振り抜くことが出来るし、深いラフでスウィングするのにも有効ですが、湿った砂や固い地面だと撥ね返されてトップする危険があります。右端のようにバウンス底部が浅いと、フェアウェイからのピッチやチップにも使えますが、ソフトな砂だとめり込んでつっかえてしまう危険があります。

以上の点を踏まえ、Dave Pelzは以下のようなことに注意すべきだと云っています。

1) バウンス底部の深さが浅いウェッジ(右端)だと、フェースをオープンに構えた時のバウンス効果は二倍程度であるが、バウンス底部の深さが深いウェッジ(真ん中)をオープンにするとバウンス効果は三倍(デザインによってはそれ以上)に増える。
2) バウンスが大きければ大きいほど、固い地面では撥ね返される。だから、フェースをオープンにした場合でもフェースに刻まれた線の三本目か四本目でボールと接触出来るような、バウンスが少ないウェッジも一本携行すべきである。
3) 同じ度数のバウンス、あるいは同じ深さのバウンスのウェッジばかり携行すべきではない。ボールがどこに飛ぶかは定かでないのだから、ソフトな砂や深いラフに飛んだらバウンスの多いウェッジ、湿った砂や裸地に行ったならバウンスの少ないウェッジが必要だ。
4) あなたのコースのコンディションに合わせて、極端に多いバウンス、少ないバウンスのウェッジを持つのに躊躇すべきでない。また、他のコースでプレイする時のために、異なるバウンスの選択肢を揃えておくのが賢明である。

(July 17, 2021)

Butch Harmon (ブッチ・ハーモン)の 親譲りのバンカー・ショット

 

実際にはこれは、彼の父で1948年のMasters(マスターズ)優勝者だったインストラクターClaude Harmon(クロード・ハーモン)のテクニックです。

'The Four Cornerstones of Winning Golf'
by Claude "Butch" Harmon with John andrisani (Fireside, 1996)

「バンカー・ショットには三つの鍵となる要素がある。
1) 右利きのゴルファーにとっては、ショットのほぼ全てを右手を使ってボールの後方を引っ叩くか、強打すべきものだ。
2) そのボール後方とは、多くのゴルファーが考えるよりももっと遠く、少なくとも3インチ(7〜8センチ)である。【編註:彼の教え子であるTiger Woods(タイガー・ウッズ)も3インチと云っています】
3) ソフトな砂にはバウンスの多いサンドウェッジを用いるべし。

以下は基本のバンカー・ショットの手順。

・左手は親指が(ハンドルの下の)シャフトにかかり、右手も通常より下方でグリップする。(これはスタンスを安定させるため両足を砂に潜らせると、事実上クラブが長くなるのを相殺するためである)
・クラブのリーディング・エッジがピンのかなり右を向くくらいオープンにする。【編註:クラブフェースは空を向く】
・スタンスをピンの遥か左向きになるほどオープンにする。こうすると、クラブのリーディング・エッジはピンにほぼスクウェアになることを理解せよ。(しかし、まだピンのやや右である)
・体重の大部分を左サイドにかける。
・ボール位置は左踵の前方。(前から見ると、左爪先前方に見えるくらい)
・リーディング・エッジをボール後方3インチ(7〜8センチ)の位置で構える。

・右手でシャープに振り上げ、左手首が凹型になるようにコックする。

・下半身でダウンスウィングを始めるが、右手の急速な動きでボール後方3インチ(7〜8センチ)に集中して砂を薄く削ぎ取る。(ウェッジのバウンスが飛行機の昇降舵の役割を果たして、クラブヘッドが砂にめり込むのを防いでくれる。あまりにボール近くの砂を打つと、トップしてホームランになるが、バウンスを上手く使えばその危険を回避出来る)

 

(July 17, 2021)

バンカー・ショットの基本

 

[Brook]

左の写真のように、バンカー・ショットの初期、ボールより先に砂が飛び出します。ボールを打つのではなく砂を打つのですから、これは当然です。しかし、これは見過ごしてはいけない重要な現象だと思います。

《砂を打って飛ばすのがバンカー・ショットである。ボールはその巻き添えで飛ぶに過ぎない》私はこの事実を心から実感していませんでした。砂が飛べばボールも飛ぶ。砂が飛ばなければボールも飛ばない(ホームランを除く^^)。これがバンカー・ショットの基本原理です。

[No.14]

私にはバンカーでボールを打つよりも、砂を飛ばす練習が必要だと感じました。砂の上に線を引き、それをボールに見立て、その数センチ後方にクラブヘッドを突入させ、草鞋(わらじ)大の浅い砂の層を剥ぎ取る。その砂を大きなフォローでピンの左に向かってスプラッシュする(撥ね散らす)。この練習に精出す必要があると思いました。

The Masters(マスターズ)とPGA選手権に優勝し、ゴルフ名誉の殿堂入りもしているJackie Burke, Jr.(ジャッキィ・バーク二世、1923〜)も次のように云っています。

'It's Only a Game'
by Jackie Burke, Jr. with Guy Yocom (Gotham Books, 2006)

「グリーンサイド・バンカーでは、出来るだけ高く砂を抛り上げるように。これは約4インチ(約10センチ)ボール後方の砂を正しい量取ることを助けてくれる。これがボールをピンに近づける鍵である」

紛れもなく砂だけ打つ練習は効果的でした。この練習を約一時間ずつ二日間行った後、三日目にいくつかのバンカーでボールを七個ずつ打ってみましたが、結果は良好でした。苦手だったNo.14での12ヤードのバンカー・ショットにロフト52°、バウンス9°のギャップ・ウェッジを用い、右の写真のような結果でした。

昨夜半に雨が降ったため砂がやや湿っていたので、私はフェースをほんの僅かオープンにしただけで、スクウェアにピンを狙いました。早めのコックはいつも通りで、砂が重いことを念頭にしっかり砂を運ぶスウィングをしました。二つはピン傍でした。


【おことわり】Brook Hendersonの画像はhttps://www.courant.com/にリンクして表示させていただいています。

(July 17, 2021)

バンカー・ショット総括

 

バンカー・ショットは《許容誤差が多いショットである》と云われます。ボール後方何センチにクラブを突入させるかもツァー・プロやインストラクターによって千差万別で、2センチ〜10センチまでまちまちです。

どの本で読んだのか忘れてしまいましたが、もしボールに近いところにクラブを突入させたらボールは低く出てランが多い。ボールから遠くに突入させたら、飛ぶ距離は長いがランが少ない。かくして、どっちのボールも同じ距離に到達する…というセオリーがあるのです。

つまり、その日の砂のコンディションに合わせてプレイする必要はあるが、極度に精密にプレイする必要はないのであまり神経質になる理由はない…ということです。

われわれは砂の抵抗を過小評価して、「こんな短い距離に、なんで強く大きなスウィングをしなきゃならんわけ?」という疑心暗鬼から(実はホームランが恐い)、ついつい短いフィニッシュをしてチョロに堕してしまうことが多いと思われます。この偏見を改め、ボールの下をしっかり振り抜いてピン方向に砂を撒き散らすことに専念すればいいのです。

(July 17, 2021)



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