January 10, 2021
●中部銀次郎・名言集
ある日、風呂に浸かりながら読む本を探していました。どうせ短い間だし、寛いで読みたいので英語ではなく日本語の本がいいと思いました。たまたま、本棚の上で横になっていたこの本を選びました。もう何度も読み返したことがあり、これが五回目ぐらいでしょうか。
『ゴルフの大事』
中部銀次郎×三好 徹 (ゴルフダイジェスト社、2006、1,500円)
日本のアマチュアゴルフのトップとして長く君臨していた中部銀次郎(1942〜2001)のこの本は、彼が生涯に携わった最後の本で、彼の「シンプルに考えよ、シンプルにプレイせよ」という主張が鮮明に伝わって来る好著です。
唯一の欠点は“理論シングル”を自称する作家・三好 徹が、名人に向かって自説を振りかざして突っ掛かって行く不遜な態度が不愉快なこと。ま、議論することで中部銀次郎の話のボルテージを高めるのに一役買っていると考えれば我慢出来ますが…。面白いのは、練習場で三好 徹がボールを打つ段になると、全然うまく行かないので急に謙虚になる様子。それまでの大言壮語はどこへやら。滑稽ですらあります。
この本についてはこれまでに何度か取り上げていますが、それらと重複しない範囲で今回印象的だった中部銀次郎の発言を紹介します。
当サイトの読者に興味深いであろう「80を切る考え方」について、中部銀次郎は以下のように云っています。パー72のコースで79で廻る場合、スクラッチの人(パー・プレイする人)より7打のミスが許されると考えることが出来る。全てのホールで2パットすると仮定すると(計36パット)、残り36+7でショットに43打費やせるという計算になる。しかし、もしパット数が減らせれば許されるミスの数はもっと増える。そう考えれば、かなり心にゆとりを持ってプレイ出来る筈だ。
【私見】「パット数が減らせれば許されるミスの数はもっと増える」という点は重要だと思います。それはパッティングに上達するのが早道だということでもあり、ワン・パット(あるいはOK)圏内に寄せるチッピングに習熟することであると云ってもいいでしょう。私の最近の1ラウンドのパット総数は31、29、28、29という感じですので、5〜8ストロークほどミスの許容範囲を広げています。《ミス・ショットをカヴァーしてくれるのは上質のショート・ゲームである》…という説が数字で理解出来ます。
中部銀次郎は「頭を動かさないこと」を最優先しますが、特に飛ばそうと考えた時に左に頭が動くことが最大のパワー・ロスの原因であると喝破します。
【私見】私はシニア・グループの中でドライヴァーの正確さでは三本の指に入ると自負していますが、時折プルを打つことがあります。これは中部銀次郎が云う通り、「飛ばしたい!」という欲望が芽生えた時に、ボールの真上に頭を留まらせるのではなく、身体全体が左に流れる時に起ります。伝説的インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の"Stay behind the ball"(ボールの後ろに留まれ)という名言のように、頭は右膝の上に踏み留まっていなくてはなりません。欲張るのは百害あって一利無しです。
中部銀次郎はこうも云っています。「右手の返しを意識的にする必要はない。頭が残って左手でリードしてやれば、自然に手は返る」…と。やはり頭を残すことが肝心要(かなめ)のようです。
パットに関して、中部銀次郎は示唆に富んだことを述べています。18ホールのターニング・ポイントとなるパットをする場合と、深く考えないで漫然とパットする場合とでは結果が異なる。ここ一番の大事なパットだと思うと二回に一回、あるいは三回に一回はパットの入り方が違う…と。
【私見】私の場合、1.5メートルぐらいのバーディ・パットに臨む時、「このラインは知ってる。頂きだ」と成功を確実視して打つ場合と、「チームは現在5オーヴァーで、このままでは自滅だ。何とか入ってくれ!」と祈るような気持で、基本(グリップ、ポスチャー、体重など)を全て正しくし、運を天に任せて頭を残した(ボールを見送らない)ストロークをした場合は、入ることが多いようです。
最後に、中部銀次郎のゴルフ観。「知性、教養、人格…というものが全部含まれて、その人のゴルフを形成していると思う。単にスコアがいいというだけでは片手落ちである」
【私見】煎じ詰めれば「紳士的であれ」ということですね。自分や他人のボールを蹴ったり、スコアやハンディキャップを誤摩化すトランプ元大統領みたいなゴルファーは下の下である…と解釈します。
・「中部銀次郎のゴルフ」(tips_118.html)
・「中部銀次郎のゴルフ・パット篇」(〃)
・「中部銀次郎のゴルフ・メンタル篇」(tips_117.html)
(January 10, 2021)
●2020年末の大失敗
英語の有名な文句に"If it ain't broke, don't fix it."(壊れてないなら直すな)というのがあります。私は壊れていないものを直してスランプに陥ってしまいました。
シニア・グループの中に、比較的若い方で、とても性格のいい男がいます。彼は飛ばし屋ですが滅多に真っ直ぐ飛ばせず、右や左の松の木にキンコンカン。見兼ねた私が、デジタル・ヴィデオ・カメラで彼のスウィングを撮影して上げました。その時、「トップで手首を平らに伸ばせ」と助言したのですが、治りませんでした。
「じゃあ、'Swingyde'(写真)を貸して、正しいトップを自習させようか」と思いました。貸すとなると、短くても一週間は返って来ません。「貸す前にもう一度使っておこう」これがいけなかった。私のトップは写真のように'Swingyde'が前腕に正しく接触しなかったのです。接触しないどころか擦りもしなかった。焦りました。正しく前腕が'Swingyde'の先端の半円に当たるようにするには、かなりインサイドに引かなければならない。いつの間にこんな風になっていたのか。
次のラウンド、私はかなりインサイドに引くバックスウィングを心掛けました。アイアンによるアプローチは絶悪となり、寄らないので長いパットばかり残る結果となりました。キャプテンを務めるのが恥ずかしい体たらく。同じラウンドが二度続きました。それが去年の年末のことです。
今年に入って、私はまだ一度もゴルフしていません。天候が悪いせいもあります(毎年、一月は雨が多い)。私は悪い記憶とマスル・メモリをリセットする必要があると考えたからです。「壊れていないものを直そうとする」以前、私は絶好調でした。その絶好調を壊してしまった。馬鹿でした。
これを書いている途中で、試みに'Swingyde'を使用してみると、その先端は問題なくすっぽり左前腕に納まるではありませんか。これなら悩むことは何もなかった。あの時は筋肉が固かったか何か別の原因があったのでしょう。返す返すも悔やまれます。
(January 10, 2021)
Copyright © 1998−2021 Eiji Takano 高野英二 |