February 19, 2021

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のグランド・スラム(パート1)

 

前回再読した'The Match'の著者Mark Frost(マーク・フロスト)は、三册のゴルフ関連のノンフィクションを書いています。最初の本(2002年刊行)がフランシス・ウィメット(20歳のアメリカ人、アマチュア)が1913年のU.S.オープンに英国の強豪プロであるハリィ・ヴァードンらを排して優勝した感動的実話。三作目が'The Match'(2007刊行)です。

二作目の本(2006年刊行)はBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ、1902〜1971)の生い立ちから「グランド・スラム」達成、引退までを克明に文字にしたものです。ゴルフのグランド・スラムとは、「同一年にメイジャー選手権大会全てに優勝すること」ですが、アマチュアだったボビィ・ジョーンズの場合は全英アマ、全英オープン、U.S.オープン、そしてU.S.アマの四大大会を指します。現在のグランド・スラムはマスターズ、全英・U.S.両オープン、全米プロとなっていますが、同一年のグランド・スラム達成者は一人もいません。Tiger Woods(タイガー・ウッズ)は、2000年のU.S.オープン、全英オープン、全米プロ、そして2001年のマスターズと、全てのメイジャーに連続優勝しましたが、二年にわたっての優勝なのでグランド・スラムではなく"Tiger slam"(タイガー・スラム)と呼ばれています。 https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51RhATg+f7L._SX326_BO1,204,203,200_.jpg

[book]

'The Grand Slam: Bobby Jones, America, and the Story of Golf'
by by Mark Frost (Hyperion, 2004, $15.95)

この本は小さい活字で475ページもある大部です。実は以前読み始めたことがあるのですが、グランド・スラム前に332ページもあり、よく知っているボビィ・ジョーンズの少年時代の話に厭きて、数10ページで挫折し積ん読となっていました。今回、'The Match'再読の余勢を駆って読もうとしたのですが、少年時代は省略し近道をしていきなりグランド・スラムの部分へ向かうことにしました。

ボビィ・ジョーンズは、既に当時メイジャーとされていた13の大会に優勝しており、特に同じ年に全英オープンと全米オープンに二度ずつ優勝していました。しかし、驚かされたのですが、ボビィ・ジョーンズの1930年のグランド・スラム達成は、楽なものではありませんでした。特に世界中のプロが「アマチュアなんぞに負けてたまるか!」と発奮したため、多くの場合ボビィ・ジョーンズが大差で逃げ切るなんてことはなく、ほとんど辛勝と云っていい感じです。また、彼がラウンド中あまりにもプレイに集中し心身を憔悴させ、食欲も失せてしまい、7キロも体重を減らしてしまうことも問題でした。ただし、グランド・スラムへの途次、いくつかの幸運に恵まれたことは彼に味方しました。そういう意味では、彼がグランド・スラムを達成することは分っていても、彼の一打一打にハラハラドキドキさせられてしまいます。そこがこの本の著者の描写の巧みなところです。彼は映画やTVの脚本家でもありますから、ドラマチックに描写することに長けているんですね。

・ボビィ・ジョーンズは最長300ヤードのドライヴを放ちました。身長1.73m、体重75kgという体格ですが、なんせヒッコリー・シャフトの時代ですからね。われわれは、プロ入りした1970年当時の尾崎将司(身長1.81m、当時の体重は不明)の「300ヤード・ドライヴ」に驚嘆していたのですが、ボビィ・ジョーンズは木製の古いクラブで300ヤード打ってたんですから、尾崎に驚くほどのことじゃなかったわけです。

・現在、どのメイジャーも他の前回のメイジャーの何位までかはトーナメントに招待されますが、当時のメイジャーは現在と異なり前年度優勝者であろうが他のメイジャー優勝者であろうが、クォリファイング・ラウンドに出場して上位のスコアを出さなければ参加出来ませんでした。

・アマチュアのメイジャー・トーナメントの本戦は現在もそうですがマッチ・プレイ方式です。一緒に廻る相手との一対一の対決なので、これもメンタルに消耗する理由の一つです。加えて、当時のアマのメイジャー・トーナメントは世界中から選抜された200人かそれ以上が参加し、五日間試合を行い、最終日は2ラウンド(36ホール)しなければならないため、体力も激しく消耗しました。

・ボビィ・ジョーンズ(当時28歳)は1930年に、奥さん同伴で客船で英国に向かい、二年に一度の米英(含アイルランド)アマチュアの対抗戦(マッチ・プレイ)であるWalker Cup(ウォーカー・カップ)にキャプテンとして出場しました。アメリカ勢10ポイント、イギリス・アイルランド勢2ポイントで、アメリカが圧勝。その後、続けて全英アマ、全英オープンに参加しました。

【全英アマ】1930年5月、St. Andrews(セント・アンドリュース)Old Course (Scotland)

・初日、参加者の多くは2ラウンドしなければならなかったが、ボビィ・ジョーンズはシードされていたので、午後が初ラウンドだった。相手は、あるゴルフ・ライターに云わせると英国の元炭坑夫だそうで、無名の若者だった。ボビィ・ジョーンズはNo.4でバンカーからアルバトロスを達成した(二打目がチップイン)。しかし、相手も屈せず健闘した。ボビィ・ジョーンズは3and 2で勝った。【2ホール残して3アップで勝ったという意味。以下同じ】

・二日目の午前、ボビィ・ジョーンズは二人目の相手に5 and 3で圧勝。
・その日の午後の相手は、前年の全英アマ優勝者Cyril Tolley(シリル・トリィ、35歳、英国)で、ボビィ・ジョーンズの友人の一人だった。さすが前回の優勝者だけあって、シリル・トリィは見事なプレイで一歩も引かず、18ホールでは決着がつかずサドン・デス・プレイオフにもつれ込んだ。再び、No.1。ボビィ・ジョーンズは二打目をグリーンの左手前へ。彼はピッチでピンまで2メートル強へ。続いてパットしたボールはカップに数センチほどショート。そのボールはシリル・トリィがカップを狙うのを妨害する位置で停まった【この状況はstymie(スタイミィ)と呼ばれ、当時のルールではマークする必要はなく、相手は自分のボールをジャンプさせるか、カーヴさせねばならなかった】。シリル・トリィはカーヴさせられず失敗。ボビィ・ジョーンズが勝った。

・三日目の最初の相手のイギリス人に7 and 6で圧勝。
・次の相手は今度のウォーカー・カップのチーム・メイトで、前年の全米アマ優勝者のアメリカ人Jimmy Johnson(ジミィ・ジョンスン、34歳)だった。ボビィ・ジョーンズがNo.11で5ホール残して4アップとなった時、大観衆は「勝負あった」と考えて他のマッチを見に散らばって行った。しかし、No.14からジミィ・ジョンスンが底力を見せ始め、ボビィ・ジョーンズのリードを二打差へと詰め寄った。ジミィ・ジョンスンの挽回を知った大観衆が二人の周りに戻って来た。No.17でジミィ・ジョンスンは見事な寄せを見せて勝ち、その差一打差となった。最終ホール、ボビィ・ジョーンズは後に回顧して「人生で最も長い2.7メートルのパット」と云ったパットを見事に沈めてジミィ・ジョンスンを下した。

・四日目の最初の相手はイギリス人で、ボビィ・ジョーンズは4 and 3で勝利した。
・午後のマッチを待つ間、ボビィ・ジョーンズは彼が「一生の不覚」と悔いることをしてしまった。ホテルの部屋で奥さんとシェリー酒(白ワイン)を飲んだのだ。彼は遊びのラウンド前は別として、これまで公式競技の前には一滴も飲んだことがなかったというのに。直ちに彼の顔は赤くなり、視野がぼやけて来た(それは午後のラウンドの9ホールの間続くことになった)。
午後の相手は今回のウォーカー・カップのチーム仲間だったアメリカのGeorge Voigt(ジョージ・ヴォイト、35歳)は、パットの名人でもあった。焦点が定まらぬ目でボールを直視出来ず、ボビィ・ジョーンズはいくつものバーディ・パットを逃した。それどころか、残り5ホールとなった時点で、今回のトーナメントで初めて相手にニ打差のリードを許すことになった。
その時スコットランドの観衆は、口々にあるジンクスについて囁き合った。それは、このセント・アンドリュースで《残り5ホールで2アップとなって勝った者はいない》という古い迷信だった。その迷信を裏書きするように、No.14でジョージ・ヴォイトは風を読み間違えてOBを出し、No.16でも風の影響で失敗して二人はタイとなった。No.17、ボビィ・ジョーンズは「まるでグリーンに線が引いてあるようにラインが見え、成功は確実だった」というパットを沈めて1アップ。No.18で、ジョージ・ヴォイトはタイにしてプレイオフに持ち込める可能性があった1.8メートルのパットに失敗し、ボビィ・ジョーンズは勝ちを収めた。

 

・最終日36ホール・マッチの相手はイギリス人Roger Wethered(ロジャー・ウェザード、31歳)だった。彼は1921年に全英オープンの二位に食い込み、1923年の全英アマに優勝していた。彼の妹Joyce(ジョイス)は、全英女子オープンに四回も優勝経験があった。決勝戦開始前にR&Aの役員が挨拶し「これまで素晴らしいスコアは数々出ているが、スコアカードに少なくとも一つの5という数字を書かなかった者は一人もいない」と云った。ボビィ・ジョーンズは「よし、おれは5は出さないぞ」と心に誓った。【編註:こう読むと当時のセント・アンドリュースにパー5が無かったように受け取れます。調べてみましたが分りませんでした】
ボビィ・ジョーンズは9ホール堅実にパーで廻り、ロジャー・ウェザードはやや不安定なドライヴを放ちながらも同じくパーで食い下がった。しかし、No.17までにボビィ・ジョーンズは5アップとなっていた。No. 17、彼は60センチのパットを外して、スコアを5にしてしまった。ボビィ・ジョーンズは5打リードで午前のラウンドを終えた。ホテルに戻った彼は怒り狂っていた。「5打リードは立派なもんじゃないか」という慰めに、「No.17であの60センチを外さなければ、このセント・アンドリュースで5という数字を書かない最初の人間になれたんだ!」と口惜しがった。
午後の最終ラウンド。観衆はますます膨れ上がり25,000人がボビィ・ジョーンズを見にやって来た。まだ怒りが収まらないボビィ・ジョーンズはNo.1で3パットし、早々に5を叩き、もう5という数字を書かない最初の人間になるのは諦めた。ロジャー・ウェザードの精彩のないプレイに助けられ、ボビィ・ジョーンズは7 and 6で勝利した。これはボビィ・ジョーンズにとって初の全英アマ優勝であった。
あるゴルフ・ライターは「ボビィ・ジョーンズはアレキサンダー大王に追いつき、もはや勝つべき目標はなくなった」と書いた。彼のその考えは大間違いであった。【続く】

(February 19, 2021)

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の 集中

 

[Secret]

これは'The Best of Bobby Jones'(ベスト・オヴ・ボビィ・ジョーンズ)と銘打たれた、ボビィ・ジョーンズのいくつかの著作から抽出したtipsをまとめた本です。

'Secret of the Master'
edited by Sidney L. Matthew (Sleeping Bear Press, 1996, $22.00)

「大西洋横断単独飛行に初めて成功したリンドバーグは、最も困難だったのは覚醒し続けることだったと語った。ゴルファーにとっても、精神的に覚醒し続けることは重要だ。ちょっとした集中心の欠如、僅かな不注意などが、機械的動作の過ちよりももっと悲惨な結果を招くものだ。

ゴルフに熟練した者は全てを意識せずにコントロールするのではなく、完全に潜在意識でプレイする…と云われるが、それは事実から程遠い言葉だ。確かに正しいスウィングをする習慣は、本能的にスウィング動作の多くを実行させる要因である。しかし、常に二つや三つのことは積極的に気を配らないといけないものだ。それを認識して初めて、三時間、72打のショットを遂行するために集中することが可能になる。

私が集中という時、ゲーム以外の全てを意識から排除せよとだけ云っているのではなく、プレイヤーが知っているべきこと全てに注意を払うべきだという意味も含んでいる。われわれは、誰とでも肩を並べられる素晴らしいフォームでプレイする多くの人々が、不完全な集中心のせいで勝利出来ないことを知っている。ボールに歩み寄り、ほとんど何も考えずに打つことは容易い。そのプレイヤーは、取り返しがつかないダメージが訪れるまで、そのショットに心を篭めていなかったことに気づかない。

私の多くの失敗の中の一つを紹介しよう。Southeaster Open(サウスイースターン・オープン)において、私は二つのボギーでスタートしたものの、その後打つ感覚を取り戻し、もうミスは犯さなくなった。この状況で私は最も避けるべきことをやってしまった。『もう大丈夫だ』と感じ、眠ってしまったのだ。No.16のティーで、私は何も考えずにスウィングしてしまった。ボールは柵を越えOBになった。70で廻るためには残り三つのホール全てを4でホールアウトすべき状況だったのだが、4どころか6にしてしまったのだ。

18ホールの間、完全に集中出来る人の数は、片手の指の数ほどしかいない。その他の人々はいくつものショットをするとき眠ってしまう。彼らはその時も、後になっても自分が居眠りしていたという事実に気づかない。多くの場合、彼らは集中出来なかったのではなく、恐怖と不安のせいだったと思い違いする。

このメンタルな不調は、ゴルフし過ぎの場合にも発症する。メンタルな注意深さの欠如は、状況の異なる一打一打に必要とされる完全なる集中心を持続させることを不可能にする。彼は能力の限りベストを尽くそうとするのだが、それは彼の手に余るものであり、余計な打数でミスを償わなければならない。

集中とは何かと再度問われるかも知れない。思うにそれは至極単純だ。どの一打にもある基本というものがある。正しく集中していれば、それが考慮される。例えば、ゴルファーはスウィングしながら体重移動することを知っているべきであるし、左サイドを充分に廻さねばならないということも知っているべきだ。特に、ゴルファーがこの二点を見落としてトラブルに陥っている際、スウィングする前によく考えるべきことである。ゴルファーはそれらを軽視してはならない。スウィング開始前に熟慮すべきである。スウィングの遂行をイメージすべく考え抜くか、少なくとも充分に集中してスウィング開始を視覚化すべきだ。以上は、いくつかあるうちの数例である」

【参考】
・「Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の“オールドマン・パー”の発見」(tips_170.html)
・「Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の師弟関係」(tips_170.html)
・「Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のパッティング」(tips_173.html)

(February 19, 2021)

大寒波襲来

 

今週はいい日でマイナス6℃、最低11℃でした。雪や氷雨が降り、とてもゴルフどころではありません。地球温暖化は一体どうしたのかと思うほどです。

この天候で交通が途絶えたせいで、スーパーの食品売り場は空っぽになっています。私のところは大丈夫でしたが、市内で長時間停電したところもありました。COVID-19に加えてこういう天候に見舞われるとは、弱り目に祟り目もいいところです。

(February 19, 2021)



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