February 02, 2021

'The Match'(ザ・マッチ)

 

図書館で借りたこの本は前に一度読んだのですが、どういう話だったかよく覚えていなかったので、もう一度読む気になりました。これはある大金持ちが、自分が贔屓にしているトップ・クラスのアマチュア二人のことを「彼らは世界で最高だ。プロも尻尾を巻くほどだ」と自慢したのを聞き咎めた別な大金持ちが、「じゃ、おれがプロ二人を用意したら勝負するかい?」ということで、ある日の午前中に四人によるベスト・ボールの対戦が行われた一部始終を文字で再現したものです。

アマの一人は、後にUSオープンに優勝し、35年間もCBS-TVで解説を勤めたKen Venturi(ケン・ヴェンチュリ)。もう一人は全英アマ、全米アマに優勝した経歴を持つHarvie Ward(ハーヴィ・ウォード)。この二人のペアは、アマのベスト・ボールの試合では不敗の記録を誇っていました。対するプロ側はBen Hogan(ベン・ホーガン)とByron Nelson(バイロン・ネルスン)。二人とも公式には引退していましたが、年一回ビング・クロスビーがカリフォーニアで主催するプロ=アマ・トーナメントのために揃って来ていたのです。

[book]

'The Match'
by Mark Frost (Hyperion, 2007, $24.95)【邦訳】『ザ・ゴルフマッチ ― サイプレス・ポイントの奇跡』マーク・フロスト著、永井 淳訳(ゴルフダイジェスト社刊、2010年)

四人のアマとプロの白熱する試合経過も興味深いのですが、二人のプロが大成するまでの前史が面白い。ホーガンもネルスンも同い年で揃ってテキサス生まれのテキサス育ち。彼らがプロ入りしたのは大恐慌の頃で、トーナメントの賞金額もとても少なかったそうです。

ボビィ・ジョーンズに憧れていたネルスンは、同じようにアマチュアとして活躍しようと思っていましたが、旅費や宿泊費にも困るようになり、1932年のあるトーナメントで「プロになりたいんだが…」と云ったら、「5ドル出して、『おれはプロだ』と云えばいい」と云われたそうです。その頃はテストも資格審査のトーナメントも無し。かくして、彼はプロになりました^^。

ホーガンは一足先にプロ入りしていました。しかし、不景気の影響で当時のトーナメントは賞金は少なく、しかも賞金を貰えるのは上位十人とか六人とかだったため、下位だと手ぶらで帰らなくてはなりませんでした。

ホーガンは顔見知りの親切な人から150ドル借金してツァーに参加していましたが、全然目が出ず、懐が残り15セントという最悪の状況になったことがあったそうです。カリフォーニアでプレイしている時は、わざとOB区域に打ち、隣接する果樹園のオレンジをもいでゴルフバッグにしこたま詰め込み、オレンジを齧って餓えをしのいだこともあったとか。

1938年の冬、北カリフォーニアのツァーに参加していたホーガンは、駐車料金を節約するためホテル近くの空き地に車を停めました。翌朝出発しようとしたら、車のタイヤが四本とも盗まれていた! ホーガンは「もう終わりだ」と思いましたが、同行の奥さんに叱咤激励され、同宿のネルスンに乗せて貰ってコースへ。六位に入ったホーガンは285ドルの賞金を得、続くトーナメントでは三位に入って350ドルを得て一息つきました。

ホーガンより一足先に目が出たネルスンは、いくつかのトーナメント優勝もあって、1935年ニューヨークに近いニュージャージー州のあるゴルフ場のアシスタント・プロの仕事にありつきました。その翌年、ニューヨーク州ロング・アイランドで開催されたメトロポリタン・オープンに、ネルスンは宿泊費を浮かすため片道二時間車を運転して通いました。そして、連日昼食はホットドッグにコカコーラだけだったそうです。しかも、このトーナメントで彼は優勝したのですから驚きです。

今ではホーガンもネルスンもゴルフの歴史の伝説的巨人となっていますが、彼らの過去に果樹園の果物を盗んで食べたり、ホットドッグとコーラだけで昼食をしたことがあるなんて信じられませんね。

(February 02, 2021)

Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の叡智

 

'The Match'という本を再読して、Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の偉大さに改めて驚かされました。で、当家にある以下の本をもう一度読んでみました。自然に私の目は、目下のテーマである「左膝がリードするダウンスウィング」について書かれているところへ吸い寄せられました。【この箇所について以前に紹介した全文は「ダウンスウィングの正しい連鎖反応」(tips_173.html)を御覧下さい】

[Byron]

'Shape Your Swing The Modern Way'
by Byron Nelson with Larry Dennis (Golf Digest, 1976)

「ダウンスウィングを正しくスタートさせる鍵は左膝である。左膝は、バックスウィングの間に右へ横移動する。ダウンスウィングは、いまだ柔軟さを保っている左膝を左方向に水平に戻すことで始めるべきだ。この動きは左踵を固定し、脚と下半身を左にスライドさせ、左サイド全体と、一組となった腕・手とを引っ張るパターンを確立する。

腰が左へ動くにつれ、右膝はボール方向に動き、右肩を正しく下方に動かす。体重は右踵の内側から左踵の外側へと動く(そこは体重のフィニッシュ地点でもある)」

図でお判りのように、彼のダウン・スウィングの最初の一歩も「左膝をターゲットに向けて動かす」ことで、それに連れて右膝も左に動き、腕・手を引っ張り下ろすわけです。左膝の動きに連動して、右肘が下りて来ているのが分かります。

最近、ラウンド中にこの「左膝がリードするダウンスウィング」を予習するいい方法を発見しました。通常のスタンスではなく、両足をくっつけて素振りするのです。両足がくっついていると、ダウンスウィングのスタートは左膝を左に動かすしかありません。否応なく左膝が牽引車になります。この素振りを数回繰り返してから本番に移ると、ピュアなショットが生まれます。

次に私の関心はByron Nelsonのパッティング・メソッドに向かいました。

パッティングの秘訣は、絶対に左手首を折らないことだ。絶対にパターヘッドに両手を追い越させてはいけない。もしこれに反すると、パターフェースはオープンになったりクローズになったりし、プッシュやプルを招くことになる。【参照:「パットでもFLW(固定した左手首)(tips_159.html)】

もう一つの秘訣。それはパットではバックストロークでもフォワードストロークでも、パターヘッドを上げてはいけないということだ。特にショートパットではラインに沿って低くパターを動かすべきであり、それによってしっかりボールを打つことが出来る。フル・スィングでもそうだが、クラブは低い軌道で動かすべきなのだ。【参考:「続・ストックトンの技法」(tips_10.html)】

ロングパットではパターを低く動かしてはいけない。そんなことをすると、身体を引っ張ってしまうことになる。自然にパターが上がるに任せるように。

リズミカルにパットすること。これはあなたがパッティング・ストロークに組み入れることが出来る最も重要な要素だ。

『ネヴァー・アップ、ネヴァー・イン』は悪しき格言だ。カップで息絶えるように打たれたボールなら、カップの上下左右あらゆる角度から転がり落ちる可能性がある。落ちなかったとしても、膝がガクガクするような距離が残ることはない。カップを通り過ぎるように強く打たれたボールは、カップから上の難しいラインを残し、プッシュやらプルやらを生じ易い。もっとも、4フィート(約1.2m)までの短いパットは、しっかりカップの向こうの壁に当たるように打つことが望ましい。これはラインを易しくする。

距離感を養うための長いパット練習ははいいが、それを入れようとする練習は、失敗の連続によって自信の喪失に繋がるだけだ。練習は1〜2メートルの範囲から成功させることを主眼とすべきだ。難しいラインを選んではならない。それも自信を喪失させるだけだからだ」

Byron Nelsonの「長いパットではなく、1メートル前後の練習をせよ」は中部銀次郎のパット練習に関する考え方と共通しています。【参照:「中部銀次郎のゴルフ・パット篇」(tips_118.html)】

【参考】
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の長いコースの攻略(tips_64.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の牧場が買えるゴルフ(tips_66.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の左の壁は忘れよ(tips_66.html)
・モダン・ゴルフの祖Byron Nelson(バイロン・ネルスン)(tips_88.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)のスコアをよくする効率的練習法(tips_168.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の 曲がってもいい、常に一定のスウィングをせよ(tips_168.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)のモダン・ゴルフを生んだ妻(tips_168.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)のバイロン卿の垂訓(tips_169.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)のバンカー・ショット(tips_169.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の Hit(ヒット)でなく、打ち抜くべし(tips_169.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の パワーを生むのは、よいテンポである(tips_171.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の 現実的ゴルファーであれ(tips_172.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の ダウンスウィングの正しい連鎖反応(tips_173.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の 伸び上がらず、低く留まれ(tips_173.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の スウィングの鍵は少ないほどよい(tips_178.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の勝利の秘訣(tips_186.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)のプレイ速度に注意せよ(tips_192.html)
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の 上手い人はオープン・フェースでフックを打つ(tips_195.html)

(February 02, 2021)

COVID-19の影響

 

数年間、週三回行なっていたジム通いを停止しています。体育館のように広い施設ですが、何かウイルスが漂っているようで薄気味が悪いし、みんなが素手で握る運動器具に触れるのも怖いような気がするからです。私の場合、COVID-19のワクチンの一回目を受けただけなので、まだ完全に免疫とは云えないし、二回目を受けたとしてもジムに復帰するかどうかは未定です。このパンデミックが収束に向かうまで、危うきに近寄らずという方針がいいと思っています。

今年の夏頃までは以前と飛距離が変わった気はしなかったのですが、ほぼ一年ジムでの鍛錬を怠っている影響が飛距離に出て来ました。以前より10〜20ヤードは落ちている感じです。

「これはまずい!」私のジムでの運動は主に上腕三頭筋の鍛錬でした。曲げた肘を伸ばす運動と云えば解りやすいでしょうか。ただ伸ばすのではなく、抵抗のある器具で力を篭めて伸ばしたり、引っ張ったりします。家にはそんな器具はないので、10ポンドのダンベルを使うことにしました。ダンベルをゴルフ・クラブに見立てて右腕一本で後方に上げ、「左膝がリードするダウンスウィング」よろしく左膝の動きとともにインパクトへと引っ張り下ろす。これを20回。次に左腕だけで同じことを20回。これをワン・セットとし、一日数回、一日おきに行うことにしました。休みの日に筋肉の組織細胞が成長するので、毎日やらない方がいいのです。これが、ジムの代わりになって飛距離が回復することを期待しています

(February 02, 2021)



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