December 11, 2021
●身体を鍛えてスコアを減らす
最近のPGAツァー、LPGAツァー、チャンピオンズ・ツァーなどに随行するフィットネス・ヴァン(運動器具を備えた可動型ジム)は大繁盛だそうです。「飛距離を増す」、「身体の故障を防ぐ」という両方の意味で、プロにとって身体鍛錬は欠かせないものになっています。
しかし、身体の鍛錬はプロだけに必要なものではありません。われわれ素人も、より遠くより正確にボールを打ちたいと思ったら、安定した下半身、強靭な腕力が必要です。
「生体力学的鍛錬ヴィデオ」(http://www2.netdoor.com/~takano/golf/tips_50.html#video )の開発者・Neil Chasanが出版した解説本'Total Conditioning for Golfers'(2000)に、次のような部分があります。
「カリフォーニア州生体力学研究所が、筋電計(筋肉の電気的活動をモニターする最新の医療的研究法)を用い、上級レヴェルのゴルファーのスウィングを調査・分析した結果がある。それによれば、
・腰がスウィングを開始する。それは身体を押すのではなく、身体を引く動きを示した。
・胴体の捻転と柔軟性が非常に重要である。シニアと初心者は、上級者・若いプレイヤーなどの半分しか捻転出来ない。
・身体の中の大きな筋肉がパワーを生む。特に股関節を取り巻く尻の筋肉がそれである。
・肩の回旋筋腱板(肩関節の周囲を取り巻いて支えている帯状の組織、図の四つの筋)の筋肉が重要な役目を果たしている。
分析によれば、ゴルフ・スウィングをする際には、肩の大きな筋肉より回旋筋腱板の筋肉がもっと活発であった。回旋筋腱板の筋肉の強化が必要である。
…ということなどが解明された」
Neil Chasanは、これらの調査・分析結果に対応する鍛錬法として「生体力学的鍛錬ヴィデオ」を考案したのだそうです。彼のプログラムが脚・腰・尻・胴の回転などの運動に重点を置いている理由が解ります。スムーズなスウィングのための肩の運動、首の障害を防止する運動なども取り入れられています。
'The Senior Golfer's Answer Book'(Syd Harriet. Ph.D., Psy.D. and Sol Grazi. M/D., Brssey's Inc., 1999)という二人のドクター(心理学者と医師)の共著によるシニアのための本に、次のような箇所があります。
「ゴルフに役立つ運動をたった一つ挙げろと云われたら、私はクランチ(crunches、腹筋運動)をお勧めする。クランチは、飛距離の源であるバックスウィングにおけるトルク(捻転力)を生み出す。腹筋を鍛えることによって腰痛を予防することにも繋がる。
クランチは、起き上がり腹筋運動の一種だが、床から背中全体を持ち上げるのではなく、首と肩だけを上げるものだ。この動きを、90°に曲げた両脚を椅子にかけたり、90°に曲げた両膝を宙に浮かして行なうことも出来る。両手は胸の上で交差させ、頭・肩を上げたら数秒間静止する。そして、ゆっくり床に戻す。
最初は少ない回数で行なって習慣をつけ、次第に200回を目指す。200回行なうのにはたった3〜5分しかかからない。チャンピオンズ・ツァーのプロの多くはラウンド前にクランチを実行しており、300回行なう場合もある。
こうした運動の秘訣は、単純に習慣化することだ。何らかの事情で一日や二日の間(ま)が空いたとしても、運動を止めてはいけない。逆に、身体が苦痛を訴えたら、無理に継続するのもよくない。その日は即座に中止すること」
腹筋を鍛えるのであれば、当サイトにある「腰痛体操」(http://www2.netdoor.com/~takano/golf/tips_22.html#back)もお勧めです。腰痛の原因は緩んでしまった腹筋ですから、腹筋を鍛えれば腰痛を防止出来ます。この体操にはクランチも含まれているだけでなく、腰痛治療のための様々な腹筋運動が組み合わされています。四股を踏むことでも同じように下半身を強化出来るでしょう。
スキーヤーが行なう脚部鍛錬の運動に、"wall sit"(空気椅子、図)というのがあります。壁に背をつけて立ち、両足は30〜60センチ身体の前方に置く。ゆっくりお尻を下げ、太股が床と平行(水平)になったら静止し、太股の緊張が感じ取れるまで待つ(約30秒間)。これを一日に数回繰り返す。意外にきつい運動です。
当サイトのある読者から、「逆手懸垂によって上腕二頭筋(力こぶを作る筋肉)を鍛錬し、ヘッドスピードが増した」という御報告も頂いています。飛距離を伸ばすには本当は上腕三頭筋(腕を伸ばす筋肉)を鍛える方がいいのですが…。懸垂は公園の鉄棒やぶら下がり健康器があれば、すぐにでも実行出来ます。これはAnnika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)も取り入れていた方法です。
前腕部や手首を鍛える運動は沢山ありますが、脚・腰を鍛える手軽な方法というのは滅多にお目にかかりません。韓国のプロSe Ri Pak(【日】朴セリ)は、修業時代に階段のある道を登り降りしたそうです。あの逞しい脚・腰は鍛錬の賜物であり、世界有数のプロとなる土台になったわけです。無料の鍛錬法の素晴らしい見本です。
2008年と2009年に二年連続ロングドライヴ世界チャンピオンとなったJamie Sadlowski(ジェイミィ・サドロウスキ)の鍛錬法は、メディスン・ボール投げと、かなりきついスクヮット(四股に類似)で上半身・下半身を鍛え、手・腕のスナップ力の増強のためにはホッケーとバドミントンを行なっていたそうです。
以上のどれか(出来れば、上半身と下半身のバランスが取れた運動の組み合わせ)を実行すれば、ウン万円する新しいドライヴァーも必要なく、飛距離は増し、ショットが安定することによってスコアは良くなり、腰痛などの障害を予防することも出来ます。
COVID-19の影響でジム通いを中断しているおかげでめっきり飛距離が減った私ですが、「飛距離を伸ばすトレーニング」(http://www2.netdoor.com/~takano/golf/tips_13.html#hands)で紹介した手・腕の運動(左図)を一日おきに行っている結果として、元の飛距離に戻りつつあります。努力は必ず報われると云っていいでしょう。お腹が弛んで来たのでクランチ、下半身強化のためにwall sit(空気椅子)も実行しています。
【参考】
・腰痛体操 (tips_22.html)
・重たいクラブを振る (tips_123.html)
・75歳で300ヤード打つ秘訣 (tips_130.html)
【おことわり】回旋筋腱板の画像はhttp://aau-jr.com/、crunchesはhttps://www.golfdistillery.com/、wall sitはhttps://www.drstevehowell.com/にリンクして表示させて頂いています。
(December 11, 2021)
●先行捻転セオリーの利用
「ティーアップの高さとドライヴァーのアドレス位置」(11/09)を確立した後、「では、約27センチ後方にしたドライヴァーのフェースは、ターゲットにスクウェアでいいのか、ややオープンにすべきなのか?」という疑問が湧きました。
すると、その疑問は即「先行捻転で飛ばす」という過去のtipを想起させました。先行捻転とは、本式にスウィングする前にテイクアウェイの部分を済ませておくという方式で、左膝・左腰・左肩を数10センチ後方に捩ったアドレスです。いわば合法的フライング・スタートというべきもの。かつて私はこの方法で自己最高の飛距離を得たことがあります。
7センチの高さにティー・アップし、その後方約27センチでアドレスするだけでも既にフライング・スタートしているわけですが、さらに先行捻転の技法で左膝・左腰・左肩を捩っておくのが理に叶っていると思われました。
先行捻転では、膝・腰・肩の後方への捻転に伴い、自然にクラブフェースが僅かにオープンになります。先行捻転を完全に実施するのではなく、単にボールの27センチ後方でアドレスする際にも、クラブフェースをややオープンにするのです。練習してみると、この若干のオープン・フェースがターゲットにスクウェアな弾道をもたらしてくれることが判りました。ボールから27センチ後方でターゲットにスクウェアなフェースで構えてしまうと、インパクトの瞬間にフェースがクローズ目になるらしく、ボールは左に真っ直ぐ飛んで行きます。先行捻転のセオリー通り、自然にフェースがオープンになるアドレスをするのがベストです。
また、先行捻転の技法を使う場合、バックスウィングでの左肩の終点は実際のボール位置ではなくクラブヘッドの前の仮想ボールの位置です。私の場合、これより浅くても深くても真っ直ぐ飛びません。
そして、テンプラを避けるために絶対に身体をターゲット方向にスライドさせない。また、インパクト・ゾーンでスウィング軌道を水平に保つ。これらが、高い軌道でボールを打つコツです。
ボール後方27センチでアドレスした場合と、そこからさらに先行捻転した場合の両方でテストしてみましたが、どちらの飛距離も変わりませんでした。現在の私にはボール後方27センチのアドレスだけで充分なようです。
【参考】
・先行捻転で飛ばす (tips_161.html)
・先行捻転・再履修 (tips_195.html)
(December 11, 2021)
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