April 16, 2021
●松山英樹
日本人ゴルファーの一人として正直嬉しいです。これを機に日本のゴルフ熱が燃え上がることを願っています。
しかし、松山英樹当人はこのトーナメントの出来に満足していない筈です(と思いたい)。5アンダーだった最終日のアウトの出来はよかったと思いますが、インはお粗末の一言です。他のプロたちが自滅してくれなければ、優勝は難しかったでしょう。松山の心臓には毛が生えていると思っているのですが、そんな彼でも「初のメイジャー・タイトル」奪取を目の前にしてビビったのでしょうか?
No.18の二打目、私は「頼むからシャンクなんかしてくれるなよ」と胸の内で呟いていました。重圧があると、えてしてグリップ圧が強くなってシャンクしがちなのです(私の場合)。松山はシャンクこそしませんでしたが、プッシュし右のグリーンサイド・バンカーに入れてしまいました。(心配させやがって…)
七年も米ツァーに参加していながら、英語でインタヴューに答えられないというのは恥ずかしいと思います。中国、韓国、タイなどの男子・女子プロが二年ぐらいで英語が話せるようになっているのと較べると、雲泥の差です。英語が話せない優勝者なんて、マスターズ始まって以来松山が初めてじゃないでしょうか。多分、松山とすればゴルフの練習に時間を使うのがおれの仕事であって、英会話なんかどうだっていいんだ…という理屈でしょう。それはそれで成立する考え方とも云えますが、やはり世界的に考えて恥ずかしいです。たどたどしくても英語で話して欲しかった。もう何度か優勝してるんですから、スピーチの原稿ぐらい用意しておける筈ですし。
右は当地の新聞のスポーツ欄の最初のページ(大手配信会社APの記事)。「日本のためのマスターズ優勝でもあった」という見出しで解るように、日本人男子の悲願であったメイジャー優勝が成就したことを祝ってくれています。梶谷 翼(17歳)のオーガスタ・ナショナルにおける女子アマ優勝、続いて同じコースでの松山のマスターズ優勝によって、日本がお祭り騒ぎをしても理解出来る…としています^^。
(April 16, 2021)
●中庸の速度を見つける
「早くも遅くも、強くも弱くもない中庸の速度」の発見は素晴らしかったのですが、常にそのテンポで打てるかというと、それはまた別問題です。身体が考える中庸の速度というものは曖昧で尺度がないからです。
No.12(上りの102ヤード、パー3)は7番ではショートし、6番をギリギリに短く持ってもグリーン奥へこぼれそうになる…というホールなので手を焼いていました。真っ直ぐ飛ぶいいショットをしてもこぼれてしまうのでは、折角の努力が報われません。
ある日の練習で、7番をスウィングのトップでちゃんとコックしさえすれば、グリーンに届くことが判りました。ただし、中庸の速度でないと右や左にぶれてしまいます。'Metronome'(メトロノーム)というAppで私の中庸の速度を測ってみました。色んなテンポを試してみましたが、♩=44が私のテンポのようです。これより早過ぎると、トップでコックする間がなく、遅過ぎると間が持てません。この方法は曖昧さがなくいい尺度だと思います。ゴルフ場に着くまでメトロノームの♩=44の音を聞き続ければ、自分なりの中庸の速度で打てるようになることが期待出来ます。なお、♩=44というテンポはゴルファー個々によって異なる筈なので、各々が確認する必要があるでしょう。
練習では二個に一個は乗るようになりましたが、次の日の本番ではプッシュしてしまい、乗せられませんでした。まだ♩=44が身についていないようです。
(April 16, 2021)
●「置き去り」小史
このサイトを始めたのは1998年ですが、調べると翌1999年に私は「腕は後ろに置き去りにして、下半身で打つように」と書いてるんです。なんと22年前です。すっかり忘れていました。
しかもです。それは当時プレイしていた海軍航空訓練基地付属のゴルフ練習場における、以下のような出来事でした。
私の後ろで若い兵隊が二人練習していました。一人は迷彩服着用なので自明ですが、私服の一人もGIカット。そのうちのどっちかのボールが頻繁に私の目の前を横切って右のフェンスに飛んで行きます。「危ねえなあ」と思いましたが、こちらのスウィングに集中していました。
"Sir! Excuse me, sir!"という声に振り向くと、私服の方の男。軍人は一般市民には「サー」を使います。別に、私がジジイだからではありません:-)。彼は「一寸、お聞きしていいですか?スライスを直す方法を教えて貰えませんか?」と云います。長年ゴルフやってますが、こうまで素直に聞かれたのは初めてです。で、彼のスウィングを見せて貰ったら、スライスじゃなく、ただのプッシュなんです。左肱を折って、早めにコックして、凄いインサイド・アウトの軌道です。私の目の前を飛んでいたボールは、彼のだったんですね。「こうクラブを地面に置いて」と、私は一本のクラブを地面に置き、「このクラブに沿ってバック・スウィング、トップの高さは左肩が終点。腕は後ろに置き去りにして、下半身で打つように」と云ったら、二発目から真っ直ぐ飛ぶようになり、当人は信じられない顔つきをしていました。
他人への説明として「置き去り」を使ってるんです。この「日記」創世記からの原稿を読み直してみましたが、いつどこでどうして「置き去り」というコツを見つけたのか判りません。そして、他人に教えたテクニックを当人がすっかり忘れて低迷していた長年月。開いた口が塞がりません。
かなり「置き去り」に近いのは次の記事でした。1999年2月の「逆説的ゴルフ」(tips_12.html#paradox)で、筆者はイギリスのインストラクターPercy Boomer(パーシイ・ブーマー)。 「ヘッド・スピードを最大限に上げる秘訣は、クラブヘッドを他の全ての動きよりも遅らすことである。これを実行するには、手首を緩やかなフリーの状態にしておかねばならない。(中略)トップでは戻りのパワーを待たねばならない。右腕で意図的に引っ張るのではなく、身体が引っ張るのを待つ。足と脚の始動を待つ。動きの中で待つ。
ゴルフのリズムはクラブヘッドをぐずぐずと引き摺る感覚である。これは脚のパワーから得られるもので、脚のパワーは左方向への回転に備えている腰によってコントロールされている。これらが自由で何ら束縛されない状態で、腕を左半身の外側および周辺へと解き放つ」
もう一つ、アメリカのインストラクターが書いた「コーチが書いた教師用書」(tips_27.html#coach)に「ダウン・スウィングの開始では両腕を後ろに残すように努める。心配しなくても、両腕はちゃんと必要な時に到着する。腕、手、肩そしてクラブのことを忘れるのが良い」という一節がありました。これも1999年の記事です。
2000年に入って、やっと「置き去り」という表現を私自身の言葉として使っていますが、この頃はまだその重要性を深く認識していなかったようです。
(April 16, 2021)
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