April 15, 2020
●ニクラス(46歳)奇跡的優勝のマスターズ・後篇・最終日
ミシシッピ州で開催されていたPGAトーナメントに参加中の次男Steve(スティーヴ)が電話して来て、「パパ、どう思う?」と尋ねた。ニクラスは「66ならタイ、65なら優勝だと思うが、どうかね?」「ボクの考えも同じだ。Go shoot it(やってみて)」
ニクラスはトーナメントで黄色いシャツを身に着けることが多いが、それは理由なく選ばれたものではない。ニクラスの妻バーバラが通う教会の牧師Bill Smith(ビル・スミス)の息子Craig(クレイグ)は少年ゴルファーでニクラスを尊敬していたが、若くして癌に冒されていた。ニクラスが少年と親しく話すようになったある日、少年が「ボクはラッキーな黄色いシャツを持ってる」と云った。ニクラスは「じゃ、おじさんも今後ラッキーな黄色いシャツを着ることにする」と応じた。以後、彼は特に最終日に黄色いシャツを着るようになった。少年は1970年代に13歳で他界したが、ニクラスは黄色を身につけることを続けている。
【ここから最終ラウンド後半のニクラスの快進撃が(彼の競争相手たちのプレイも交えつつ)息詰まるような一打一打の描写と共に36ページに渡って展開します】
ニクラスはNo.9で約3.7メートルのパットを沈めてバーディ、3アンダー(首位との差は変わらず)。続くNo.10で7.6メートルを入れてバーディ、4アンダー。
オーガスタのNo.11〜13はAmen Corner(エイメン・コーナー)と呼ばれる難所である。No.11では6メートルを沈めてバーディ。No.9から三連続バーディ。
リーダーボードでニクラスの進撃を知った数百人の観客が丘を駆け下りて来た。オーガスタでは走ることが禁じられていたが、この日その規則は無視された。ハイヒールを履いた女性まで走っていた。
No.12ティーで数千の観客が総立ちの拍手喝采でニクラスの好プレイを讃えた。その中には、ニクラスの五回のマスターズ優勝をサポートしたオーガスタのキャディWillie Peterson(ウィリィ・ピータースン)の姿もあった。このNo.12(パー3)では、スパイク・マークに邪魔されてパット失敗、ボギー。No.13(パー5)ではイーグル・パット失敗のバーディ、トータル5アンダー。
No.14はパー。
No.15(パー5)で3.7メートルのパットを沈めてイーグル、7アンダー。首位のTom Kite(トム・カイト)に並ぶ。
No.16(パー3)は池越えの難しいホール。ニクラスの5番アイアンはあわやホール・イン・ワンかという完璧なショットで、ピンの下約1メートル。それを沈めてバーディ。CBS-TVの総合アナウンサーJim Nantz(ジム・ナンツ)は「疑いの余地はない。熊は冬眠から覚めて出て来たのだ」とマイクに向かって云った。
No.17で、ニクラスがティー・ショットを左の観客の中に打ち込んで、二打目の準備に入っている頃、バレステロスもNo.15の第二打を池に入れてしまった。ニクラスの第二打はピンから約3.4メートルについたが、それは難しいラインで、ニクラス親子の読みも食い違った。しかし、このパットに成功すれば単独首位を奪取出来る。ニクラスがパットした。CBS-TVのNo.17担当アナウンサーVerne Lundquist(ヴァーン・ランドクィスト)は”Maybe...YES SIRRRR!”(入るかも…イェス・サアアアア!)と声を張り上げた。バーディ、単独首位。
No.18。ニクラスは湧いて来そうな涙を抑えるのに懸命だった。「まだ終わったわけではない」と自分に云い聞かせた。彼の二打目はショート気味で、ピンまで約12メートルあった。是が非でも2パットに収めなければならない
自宅でTV観戦していたパター・デザイナーのクレイ・ロングは、最高度に緊張していた。ニクラスが3パットしたら、パターは売り物としての価値が激減するからだ。しかし、ニクラスは最初のパットをギミー(OK)の距離に寄せ、パーでラウンドを終了した。
ニクラスは最終ラウンドを65で廻り、最後のハーフのスコアは30。トータル9アンダー。トーナメント・リーダーとなったニクラスとキャディを務めた息子ジャッキーは、コースの一軒のキャビンに招じ入れられ、TVで後続のグループのプレイを見ることになった。もはや待つことしか出来ない。ニクラスは神経質に(檻の中の熊のように)部屋の中を行ったり来たりした。座ってなどいられなかったのだ。
バレステロスは自滅し、トム・カイトだけがニクラスとタイになるチャンスがあった。彼のNo.18でのバーディ・パットは、完璧に打たれたにも関わらずカップの左に逸れた。ノーマンはNo.17で長いパットを捩じ込み、熊と鮫がタイとなった。ノーマンはNo.18の二打目をプッシュして観衆のど真ん中に打ち込み、パー・パットをミスし、ニクラスの優勝が決まった。
「過去の人、完了形」と云われた46歳のニクラスは、六着目のグリーン・ジャケットを手に入れた。父と息子は抱擁し、祝福し合った。
・優勝者記者会見の席で、優勝の感想を話していたニクラスは、ふと話を中断し、記者たちに「Tom McCollister(トム・マカラスター)はどこ?」と尋ねた。誰かが「この席にはいない」と答えると、ニクラスは「じゃないかと思った」と云った。「ニクラスは過去の人、完了形である」という記事を書いたトム・マカラスターは、実際には気恥ずかしくてその場にいなかったのではなく、〆切りに追われて原稿を書いていたのだった。彼が会見場に遅れて現われると、ニクラスは「やあトム…ありがとう」と云い、トム・マカラスターも悪びれずに「お役に立って何よりだ」と応じた。彼が仲間に話したところによれば、Tom Watson(トム・ワトスン)が「来年はおれを記事にしてくれ」と頼んだとのこと。痛烈な冗談であった。
・パター・デザイナーのクレイ・ロングはこう云っている、「(マスターズの翌日の)月曜日の昼前、5,000本のパターの電話注文があった。1986年末までに125,000本の“Response ZT”を売ったが、それは生産ラインの限界で、もっと作れればもっと売れたのだが、われわれの工場はそれ以上作れなかったのだ」
・この優勝に貢献したパターはニクラスの手元にない。行方も判らない。「おかしなことだ。メイジャー優勝で使って、持っていないクラブはこの一本だけだ」と、2006年にニクラスは語った。
Youtubeには、最終日のTV放送三時間分がまるまるアップされています。これは画質も良く、CMが抜かれているので快適に見られます。ニクラスの姿はNo.9のバーディ・パットまで出て来ません(その段階まで度外視されていたので)。しかし、No.10からは次第に焦点はニクラスに絞られて行きます。このヴィデオはいつ削除されるか分りませんので、早めに見ておくことをお勧めします。 【合わせてお読み下さい】 |
【おことわり】画像はhttps://i.ytimg.com/とhttps://www.liveabout.com/にリンクして表示させて頂いています。
(April 15, 2020)
●COVID-19下のゴルフ
当市の市長が「必要不可欠でない施設・店舗等の一時閉鎖」を命じたせいで、市が管理する施設は全て休業になっています。市営ゴルフ場も例外ではありません。
しかし、市営ゴルフ場のグリーンズ・キーパーたち数名は連日午前中のみ芝を刈っています。放ったらかしにすると、現在の芝刈り機では刈れなくなるからだと思います。そして、グリーンズ・キーパーたちはわれわれがプレイするのを黙認してくれています。ゴルフカートの車庫の扉も午前中だけ開けてくれるので、普通にプレイ出来ます。とは云っても、ウイルスが怖いということで来ない人もいますので、人影はまばらです。
ゴルフカートを使用したい場合は午前中のみのラウンドに限定されますが、歩いてラウンドするのであればいつでもOKです。実際、歩いてプレイする人は以前より増えています。
「他人と6フィート(約2メートル)の間隔をおけ」というマナーが推奨されていますので、プレイするわれわれも互いにあまり接近しないようにしています。
当初、私もヴォランティアとして芝刈りを手伝おうと申し出たのですが、どうにか人手は足りてるようで、今のところ要請はありません。
いずれにしても、市は赤字続きのこのコースを手放そうとしており、秋口までに買い手が出なければ閉鎖されることになっています。私のゴルフ人生もこのコースと運命を共にすることになるでしょう。他のコースのグリーン・フィーは(日本ほどじゃありませんが)高いので、おいそれとプレイ出来ませんし、その段階で私の上達もストップする筈です。「日記」に書くことが何もなくなれば、このサイトの使命は終わりです。
(April 15, 2020)
Copyright © 1998−2020 Eiji Takano 高野英二 |