September 07, 2019
●従来型スウィング vs. シングル・プレーン・スウィングカナダの異才Moe Norman(モゥ・ノーマン)のスウィングをモデルとする“シングル・プレーン・スウィング”を提唱するインストラクターTodd Graves(トッド・グレイヴス)が製作したDVDに興味深い分析が説明されています。これはPGAツァーの若手Justin Thomas(ジャスティン・トーマス)の身体の数ヶ所にセンサーを装着して、スウィング中の変化を記録した結果で、測定者は生体力学が専門のRobert Neal(ロバート・ニール)博士です。
Justin Thomas(ジャスティン・トーマス)のスウィングは、
・どちらかと云うと真っ直ぐ立った姿勢のアドレス
・インパクトで15°飛行線後方(右方)に背骨が傾斜する
・インパクトで腰骨が2インチ(約5センチ)上がる
・インパクトで右手首が返され、その角度は約13°である
インパクトで腰骨が上がるのは、曲げていた膝を伸ばしたか、爪先で立って伸び上がったせいだそうです(多分両方でしょう)。
インストラクターTodd Gravesは、上のJustin Thomasのスウィングを自分が提唱するシングル・プレーン・スウィングと比較する意味で取り上げています。詳しくはYouTubeヴィデオ(https://www.youtube.com/watch?v=B-C15d5sCVA)を御覧頂きたいと思いますが、要点をまとめると次のようになります。
Justin Thomas(左)やJustin Rose(ジャスティン・ローズ)に代表される現在主流のメソッドは、2プレーン・スウィングです。【上のURLのYouTubeヴィデオには、他にも数名のプロが登場します】アドレスで両腕をほぼダランと垂らし、ボールと身体の間隔を狭く立つので両腕とクラブは一直線ではなく、手首のところで〈 の字のように折れ曲がります。その時のクラブシャフトとその延長線を写真上に描いたものがプレーン①(赤線)です。しかし、バックスウィングでクラブはアドレス時よりも高く上げられ、インパクト時には〈 の字は解消されて両手・腕が伸ばされます。何らかの調整をしないと物理的にはヘッドがボールの向こうへはみ出てしまいます。その辻褄合わせのために、腰を上げなくてはならない。腰が上がるため、インパクト時のクラブシャフトとその延長線はプレーン①よりも遥かに高くなります(黄色線のプレーン②)。プレーン数は都合二つという複雑な動作となり、ゴルファーはインパクトで肩は下げなくてはならず、腰は逆に上げなくてはならない。この相反する動作は、腰背部に多大なストレスを与える…とTodd Gravesは説きます。(確かに、腰痛になるゴルファーが多いのは周知の事実)
Moe Norman(右)のスウィングは、ボールと身体の間隔を離し、クラブと両手・腕を真っ直ぐ伸ばすアドレス(プレーン①)。これだとクラブシャフトと両手・腕が一直線となるプレーンで構え、バックスウィングもダウンスウィング(プレーン②)もその同じプレーン上で振られるのでプレーン①と②はぴったり重なります。【赤線と黄色線が僅かにズレているのは、Moe Normanがボールから30センチほど後方に離してアドレスするせいです。そうでなければ、二つの線は完全に重なります】また、Moe Normanのスウィングで顕著なのは、アドレスからインパクトまで背骨が終始同じ角度で保たれていること。さらに、彼の両足はベタ足のまま浮き上がらないこと。何故か?彼の場合、単一プレーンなので、立ち上がったり踵を浮かしたりしてプレーンの違いの辻褄を合わせる必要が無いからだ…とTodd Gravesが解説します。また、このスウィングは腰背部にストレスを全く与えないそうです。いいことづくめです。Moe Normanはターゲットに向かってフォロースルーするので、手首を返したりもしません。これも正確に飛ばせる秘訣の一つでしょう。
PGAツァーの若手Bryson DeCambeau(ブライスン・デシャンボー)は、プロ入り三年で七勝を挙げていますが、彼はシングル・プレーン・スウィングを採用して活躍しています。
私もシングル・プレーンでスウィングしていたつもりでしたが、最近鏡でチェックしたら腕・手とクラブは一直線ではありませんでした。伸ばしていたつもりだったのに、僅かに〈 の字に折れ曲がっていたのです。次のラウンドから、私は一貫して両腕を伸ばしたアドレスで通すようにしました。直後のラウンドはあまり自信がなかったせいで、パーオンした数はたった四ホールでした。しかし、その次のラウンドでは七つのホールでパーオン出来、4ボギー、2バーディの計2オーヴァーで廻れました。最初のバーディはNo.13(184ヤード、パー3)で、ティー・ショットをピン手前1.5メートルにつけ、パットに成功してバーディ。二つ目はNo.18(パー4)の二打目(残り約115ヤード)をピン横1メートルにつけ、バーディ。どちらもシングル・プレーン・スウィングの功績でした。方向性は抜群で、ティー・ショットは全てフェアウェイをキープ、距離も満足…という快打の連続でした。
その次のラウンド、Moe Normanのようにテイクアウェイで直ちにインサイドに引いたまでは良かったのですが、フォロースルーもインサイドに引いてしまい、プルを生じました。「Moe Normanのようにターゲットに向かって振り抜かなきゃ!」と決意してからは真っ直ぐ飛び出しました。この日もパーオンは七つ。No.16(200ヤード、パー4)は上り勾配でもあり、ロングヒッターでないとグリーンサイド・バンカーには入らないのですが、この日の私は入っちゃいました。シングル・プレーンは飛距離増にも役立つようです。
次回の「従来型スウィングとシングル・プレーン・スウィングの比較対照表」に続く。
【参考】
・「Natural Golf(ナチュラル・ゴルフ)」(tips_10.html)
・「Moe Norman(モゥ・ノーマン)のスウィング」(tips_195.html)
・「Justin Thomas(ジャスティン・トーマス)の両脚を伸ばして飛ばせ」(tips_193.html)
(September 07, 2019)
●飛ばしたきゃ真芯で打て
今になって思い当たりました。私がなぜJustin Thomas(ジャスティン・トーマス)風に伸び上がって打つと快打が生まれたか。私もそれと自覚せずに2プレーン・スウィングをしていたので、Justin Thomasのようにインパクトで立ち上がって初めてフェースのスウィート・スポットで打てたのです。【参照「Justin Thomas(ジャスティン・トーマス)風に飛ばす(tips_197.html)】
しかし、膝を伸ばし爪先で立っても、常に快打になるとは限りません。伸び上がり過ぎたり、伸び足りなかったりしたのでしょう。必ず同じ高さに立ち上がるなんて、ロボットでないわれわれには無理です。それも1センチ以下の数ミリの精度の違いなんですから。
そこへ行くと、Moe Norman(モゥ・ノーマン、写真)の両手・腕を一直線に伸ばしたアドレス、終始ベタ足で立ち上がったりしないで済むシングル・プレーン・スウィングでは、数ミリほどの誤差もなくインパクトを迎えられるらしく、スウィートスポットで打てる確率が高まります。事実、私のショットにスウィートスポットで打てた時のあの何とも云えない打感(手にビリビリという振動が伝わらない、手応えのないフワッとし感覚)が頻繁に得られるようになりました。
シングル・プレーン・スウィングを再履修してみて、最初違和感があったのは低いトップです。われわれは雑誌やTVに出て来るPGAツァー・プロのスウィングを真似して高いトップを作っています。そして、トップから急降下で打ち下ろす。シングル・プレーンでは、左肩が顎に、両手が右肩に達したらそこがトップです。左腕は地面と平行より少し高い感じ。「こんなんでいいの?」って思っちゃいます。
この高さから打つのは、ほとんど横殴りのビンタのようなもの。横殴りですから、インパクト後飛行線の内側(三塁側)へフォローを出すと、正真正銘のプルになります。シングル・プレーンのフォローはターゲット方向(二塁)に繰り出さなくてはいけません。で、これが飛ぶんです。当社比ですが、シングル・プレーンを再履修する以前のスウィングより(着地点の硬さ次第で)20〜30ヤードも多く飛んでいます。スウィート・スポットで打つ御利益に違いありません。このスウィングは柔軟性が衰え始め、飛距離減に悩む中年以降のゴルファーにお薦めです。
パットでもチップでもボールの真芯をクラブフェースの真芯で打つことが最重要ですが、距離が長く曲がり易いドライヴァー・ショットではまさに鉄則だと思います。
【おことわり】画像はhttp://jeffygolf.com/にリンクして表示させて頂いています。
(September 07, 2019)
●夏場のチップは5ヤード減
先日、1ラウンドで二回のチップインを達成しました。「最近チップインが無いなあ」と思っていたら、まとめて出現したのです。いずれもチップイン・バーディで、その日もう一個普通のバーディもありました。
チップインというのはプロでさえ大喜びし、得意な顔をするものですが、本当は実力というよりゴルフの神様が恵んでくれた贈り物だと思っています。
しかし、私のこの日のチップインは作戦の勝利でもありました。アメリカ南部の夏場の日中は32℃にもなりますから、散水していない限りグリーンはからからに乾いていて、相当転がるのです。私は《5ヤード減作戦》と称して、ボールからピンまで30ヤードなら25ヤードとして打ち、15ヤードなら10ヤードとして打つ方針にしています。
私のチームはアウトを2オーヴァー、No.10をボギーとし、3オーヴァーという情けない有様でした。しかし、No.11のティーから私が素晴らしいショットを放った時、チームの一人が「あれが、おれたちの最初のバーディだ!」と“予言”しました。
二打目はピッチング・ウェッジのコンパクト・スウィングの距離。コンパクト過ぎたようで、私はこれを5ヤードもグリーン手前にショート。他の三人もショートしていましたが、私のボールが最もショート。
ピンまで25ヤードの距離ですが、《5ヤード減作戦》によって私は20ヤードとして打ちました。真っ直ぐ飛び、真っ直ぐ転がったボールはピンに当たってカップに転げ込み、バーディ。“予言者”は「云っただろ?」と鼻高々でした。
そのバーディがみんなに引火し、No.13で一人がバーディ、No.14では別の一人と私がバーディ。そして、No.17。私の二打目は、グリーンのすぐ手前にショート。ピンまで15ヤードでしたが、ここでも《5ヤード減作戦》で10ヤードと考えて打ったボールは、カップのやや左目掛けて転がり(これは読み通り)ピンとカップの縁に挟まり、バーディ。
この日の前半、私は「出来ればチップイン」と欲張っていたのですが、一遍もピンにへばりつくような成果は挙げられませんでした。そして、後半そういう欲を捨て「出来ればピン傍」と思い始めてからチップインが実現したのですから不思議です。無欲の勝利というやつでしょうか。
われわれの尻上がりの攻勢も空しく、ゲームには敗退しました。しかし、二つのチップインによって、私に敗北感はありません。チップインが実力ではなくツキであるのは確かですが、何よりもグリーン外から打ったボールがカップに消えるという奇跡というか、呆気なさというか、あの独特の気分が二度も味わえたのは幸運だと思うからです。
(September 07, 2019)
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