June 09, 2019
●Horton Smith(ホートン・スミス)のパッティング
先月、カミさんと二人でNew Orleans(ニュー・オーリンズ)へ行く機会があり、ついでに古本屋へ寄ったところ、'The Secret of Holing Putts!'(パットを沈める秘訣)という本を見つけました。著者はHorton Smith(ホートン・スミス、1908〜1963)。現在彼の名を知る人は少ないでしょう。私は第一回と第三回The Masters(マスターズ)の優勝者として知っていました。ただし、パット名人とまでは知りませんでした。この本は、私がもしパッティングについての本を出すとしたら、こういう本を出すだろうな…という感じで、写真説明の多い本だったので一目惚れしてしまいました。
彼のスタイルはまた、当時主流だったパチンと手首で弾くスタイルではなく、現在主流であるアーム・ストローク(+手首)なのです。そして、「常にターゲットにスクウェアに、低く長くストロークする」という点も私のメソッドに似ているので参考になりそうでした。さらに、「フェースをhoodingする」とか、「手首をarchingする」など、何やらわくわくする秘訣が出て来ます。古本とはいえ、初版のハードカヴァーなので$35.00と一寸高かったのですが買っちゃいました。
読んでみていささか物足りなかったのは、「こうしなさい」というインストラクションばかりで、「何故そうするのがベターか」という原理の説明が少ないこと。私は「こういう物理的作用があるので、こうするのが望ましい」という説明を期待する性格なのです。しかし、Horton Smithは「私がやっていることを真似すれば、パットに成功します」という感じで、彼のメソッドを説明するだけです。しかし、何か得るところはある筈なので、要点をまとめてみました。
'The Secret of Holing Putts!'
by Horton Smith and Dawson Taylor (A.S. Barnes and Company. Inc., 1961)
「1) 最初の秘訣:Hooding(フッディング)
バックストロークでパター・フェースを絶えずターゲット・ラインにスクウェアに保つには、左手首が反時計廻りに回転する必要がある。同時に、左手がパターをバックさせる際、パターヘッドを低く芝と水平に保ちながら押す刺激を感ずるべきである。
【編註】"hood"は「フード付きオーバーコート」とか「レンズフード」などのフードで、「被せる」という意味です。Horton Smithのメソッドは「ストレート・ストローク」です。パターヘッドをインサイドに引く「アーク・ストローク」ではありません。どこまでもパターフェースをターゲット(カップあるいは中間目標)に向け続けます。そして、ヘッドを低く保ちます。普通にパターを引いたのでは、パターヘッドが上がってしまいますが、あくまでも低く保つには、左手首を反時計方向に捩ってフェースを伏せ目にしなくてはならない…という意味です。
2) 第二の秘訣:Arching(アーチング)
アドレスした後、両手首を下に折って、弓なり(アーチ)にせよ。こうすると、手首の蝶番は前後運動しか出来なくなる。
【編註】Horton Smithの説明はこれだけなので、私が補足します。手首がアーチ状隆起を呈する(=弓なりにする)と、手の自由が利かなくなり、運動は肩と腕でコントロールしなければならなくなります。これは実はフェードを打つコツでもあるのです。フェードを打つ際は、オープンなフェースの角度を保つため、手首を返さないのが原則なので、手を高くして手首を弓なりにするのがコツとされています。私はこれを応用して、手首を弓なりにしてパッティング・ストロークをしたことがありますが、何故かうまくいきませんでした。理論的には手首がロックされ、フェースがオープンになったりクローズになったり出来なくなるので、い方法だと思われたのですが…。
3) 左手のグリップはパーム、右手はフィンガー
左手のグリップがしっかりしていないと、インパクトでパターフェースが捩じれる恐れがある。生命線の下の膨らみで締めつけるように握ること。右手の掌でパターを握ると、タッチを得る軽さに欠けることになる。だから、右手は完全にフィンガーで握る。
4) 両掌は絶えずラインにスクウェアに動くべきで、オープンになったりクローズになったりすべきでない
5) バー・ストゥールに腰掛けるようなポスチャーで、目はボールの真上
6) ボール位置は左足踵の前方
ボール位置をスタンス中央付近にすると、下降気味のストロークによってバックスピンを掛けることになってしまう。逆に、ボールをあまりにもターゲット方向に置くと、左手首が折れ易くなる。これはプルを招き易い。
【編註】これは次の(7)と関連します。トップ・スピン(オーヴァー・スピン)を掛けるためには、ボールをスタンス中央ではなくターゲット方向に置く方が掛け易いからです。これは高いティーアップでドライヴァーを打つのと同じ原理です。
7) パターヘッドが芝を微かに擦り続けるようにストロークせよ
【編註】「パターヘッドを終始低く保つ」は、別のパット名人Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)の流儀でもあります。
8) トップ・スピンで打て
【編註】ボールに線を引き、その線をターゲット(カップあるいは中間目標)に合わせたとしたら、その線は一線となって転がらなくてはならない。線がぐらぐら斜めになるようではいけないのです。
まだまだあるのですが、重要なのはこれで全部です。さらに、難しいグリーンの対処法や練習法も書かれていますので、有益な部分があれば稿を改めて紹介します。
(June 09, 2019)
●Horton Smith(ホートン・スミス)と私のストローク二つを比較してみました。
1) Hooding(フッディング) 2) Arching(アーチング) 3) 左手のグリップはパーム、右手はフィンガー 4) 両掌は絶えずラインにスクウェアに動く |
5) ポスチャー
これも実行済み。
6) ボール位置は左足踵の前方
私のボール位置はスタンス中央でした。左足踵の前方で試してみます。
7) パターヘッドを終始低く保つ
意識していませんでしたが、これに近いことをやっていました。
8) トップ・スピンで打て
ボールの赤道の上を打つメリットは知っていましたが、特にトップ・スピンを掛けようとは意識していませんでした。
(2)のアーチング、(6)のボール位置…をHorton Smith(ホートン・スミス)流でやってみて、どれほど改善されるか研究してみました。
アーチングは目立った効果を見せませんでした。また、左足踵前方のボール位置は、私の場合にはプルする原因となります。
練習の結果、私の場合にはボール位置はスタンス中央、両腕を真っ直ぐ伸ばした時にいい成果が得られました。両腕を真っ直ぐ伸ばす程度の方が、弓なりにするよりも正確にストローク出来るという結果です。
(June 09, 2019)
●サンディ・バーディある日のNo.18(284ヤード、パー4)。私の二打目はガード・バンカーへ。このグリーンはコースで最も深い顎(約1メートル)に遮られています。また、コースで最も浅い砂の層の構造により、2センチぐらいの砂の下は固い地面となっていて、サンドウェッジを使うとヘッドが地面で弾かれ、直にボールを打ってホームランを製造してしまいます。
私のボールは顎から1.5メートルはあり、無理をせずに出せそうでした。ピンまでの距離は約15ヤード。旱天でグリーンが乾いているので、最近どのグリーンも早い。15ヤードではあるが、10ヤードとしてプレイすべきか?そう思ったのですが、私は自分のNo.14におけるバンカー・ショットがかなりショートしたことを思い出し、フルに15ヤードとして打つべくギャップ・ウェッジ(ロフト63°、バウンス7°)を7センチ短く持って打つことに…。【参照:「バンカー・ショットの距離調節・完全版」(tips_195.html)】 ・私のバンカー・ショットは常にピンの左に出るので、それを相殺すべくピンの約40センチ右を狙いました。 ギャップウェッジなのでボールはあまり高く上がらず、しかし充分に顎をクリアし(練習済み)、着地後ころころころころと転がり、ピン方向へ。「ピン傍でギミー・パーか?」と期待した瞬間、ボールはころんとカップに転げ込みました。Sandy birdie!(サンディ・バーディ!)期待以上の出来。 |
この日、私のチームは敗れましたが、敗北感を上回る恍惚感が得られたのでした(最終ホールでしたしね)。
(June 09, 2019)
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