September 16, 2018

Moe Norman(モゥ・ノーマン)のスウィング

 

[Moe #1]

私のゴルフ仲間の一人が亡くなり、彼の遺族からあるDVDを譲られました。それはカナダの異才Moe Norman(モゥ・ノーマン)のスウィングをモデルにしたインストラクションDVDなのですが、その二枚目全部にたっぷりとMoe Normanのスウィングが収録されていて、こっちの方が見ものでした。

Laws of Simplicity
by Graves Golf Academy, 2016

私はドライヴァーを打つ際ボールを高い軌道で打ち上げるために、ティーアップしたボールの後方約15センチでクラブヘッドを構えます。Moe Normanもボールのかなり後ろでクラブヘッドをアドレスするのですが、ドライヴァーを打つ時は15センチなんてケチなもんじゃありません。ヘッドが右足に近いので、およそ25センチ以上後ろのように見えます。【註】

【註】Moe Normanのスウィングをモデルにしたゴルフ・スクール'Natural Golf'の教科書によれば、「ドライヴァーではボールの30センチ後方にクラブヘッドをセットすること」となっています(そうすべき理由は明らかにされていませんが)。

しかし、Moe Normanは私のようにボール軌道を上げるために後方で構えるわけではないのです。何故なら、ティーアップしないでフェアウェイウッドを打つ時でもボール後方でクラブヘッドを構えますが、明らかにボールのターゲット側でディヴォットを取っています。右下の図を御覧下さい。フェアウェイウッドのクラブヘッドはドライヴァーほど後方ではなく、15〜17センチぐらいでしょう。ボール前方にディヴォット跡が明瞭に見えますね。ディヴォットを取るからには、ボールに向かってヒットダウンしているのであって、掬い上げようとしているわけではないのです。

[Moe #2]

ドライヴァーを30センチほど後方で構える時でも、彼は身体を捻転させません。スタンス・ラインも両肩を結ぶ線もターゲット・ラインに平行のままです。ですから、彼は「先行捻転」をしているわけではありません。ということは、インパクト前後では、クラブヘッドは地面すれすれに長く動くのでしょう。

Moe Normanのスウィングの特徴は、真っ直ぐ伸ばした両手をフォロースルーまで縮めないことです。他のプロたちのように両手とクラブが身体に巻き付くようなフィニッシュではなく、ターゲットに向かって伸ばされた両手がフィニッシュです。フォロースルー即ちフィニッシュ。見ているわれわれには、それはいささか物足りない思いを抱かせますが、彼にとってはそれで充分なのです。

私の現在のフィニッシュもMoe Norman風になっています。というか、両手とクラブが身体に巻き付くようなフィニッシュが出来ないせいですが(^^;;。

Moe Normanのニックネームは"pipeline"(パイプライン、送油管)でした。それほど真っ直ぐで、全く曲がらなかったからです。

「ベン・ホーガンは『真っ直ぐ飛んだボールは、どれも偶発である』と云った。私は彼に『私のスウィングを見れば、沢山の偶発にお目にかかれるだろう』と云った」
Moe Norman(モー・ノーマン)

「たった二人だけが自分のスウィングだというものを持っている。Moe Norman(モー・ノーマン)とBen Hogan(ベン・ホーガン)だ。私もこれが自分のスウィングだと云えるものを持ちたい」
Tiger Woods(タイガー・ウッズ)

なお、一枚目のDVD(インストラクション)でスウィングする人物も、クラブヘッドをボールから30センチ近く離してアドレスしますが、なぜそうするか、なぜそうすべきなのかについての説明はありませんでした。

何たる偶然か、シニア・グループにCharles(チャールズ)という新しいメンバー(黒人)が加わりましたが、彼はMoe Normanのスウィングをモデルにしたゴルフ・スクール'Natural Golf'メソッドでゴルフを始めたのだそうです(ただし、自分に合わないという理由で挫折)。彼は何と生前のMoe Normanのデモを見たことがあるそうです。ピンの周囲にボールが集まるその正確なアイアン・ショットに呆れ返ったとか。なお、彼もMoe Normanがボールの遥か後方でアドレスする理由は知りませんでした。

下のヴィデオは、上記DVDをリリースしたインストラクターTodd Graves(トッド・グレイヴス)による、Moe Norman方式の良さを伝えるイントロダクション。「旧来のスウィングは、手とクラブが折れ曲がっている2プレーンのスウィングである。手とクラブを一直線に伸ばしたMoe Normanの1プレーン・スウィングの方がシンプルで打ち易い」と云っています。

 

【参考】
・「Moe Norman(モゥ・ノーマン)のNatural golf(ナチュラル・ゴルフ)」(tips_10.html)
・「Moe Norman(モゥ・ノーマン)の半生」(tips_85.html)
・「先行捻転で飛ばす」(tips_161.html)
・「Moe Norman(モゥ・ノーマン)のプレショット・ルーティーン」(tips_187.html)

(September 16, 2018)

スウィング・スピードがボールの方向を変える

トップクラスのプロ・ゴルファーは、クラブの長短に関わらずスウィング・スピードが一定である…と云われます。それが何故なのか、解ったような気がします。

市営ゴルフ場のNo.9(230ヤード)は、ゆるやかな左ドッグレッグで、かなりの打ち上げです。他のゴルファーたちは、フェアウェイ真ん中ではあるものの5番アイアンの距離を残すか、飛ばす人でフェアウェイ右か、そのまた右のラフということが多いホール。私はここでフェアウェイ左へ打ち(ピンに近い)、短く持った9番アイアンでグリーンを攻める(とても簡単)…ということが数週間続きました。仲間の一人が、「このホールはあんたの庭だね」とやっかむように云ったほど。

ところが、ある日を境にそのお得意の場所(フェアウェイ左)に打てなくなりました。数週間右方向ばっか。不思議でした。

突然悟ったのです。最近、飛距離に自信を得ていた私は、このホールで以前よりもっと飛ばそうとし、通常より早いスウィングをしていたのです。通常のスピードならボール位置でクラブフェースがスクウェアになるところを、早いスピードだと手首がスクウェアに戻る前にボールに到達してしまう。オープン気味のフェースによって、ボールは右方向へまっしぐら(プッシュ)。

過ちに気づいた後、そのNo.9で「打つ」のでなく「スウィングする」意識で、ティーに立ちました。ちゃんと、以前のようにフェウェイ左側のお馴染みの地点に飛ばすことが出来ました。

パー3で、「欲張らずに大事に打とう」と、通常よりゆっくりのスピードでスウィングする場合も同じことが起きます。あまりにゆっくりでも、フェースがスクウェアになる以前にボールに到達してしまう。結果はプッシュ。

つまり、通常より早くても遅くても、ボールは真っ直ぐ飛ばなくなるのです。これが、名人たちが常に一定の速度でスウィングする理由だと思います。>

(September 16, 2018)

一打入魂

「一球入魂」は学生野球の推進者だった飛田穂洲(私の高校の先輩)の造語で、「一球一球に魂を篭める」という意味だそうです。私は「一打入魂」がゴルフの神髄だと思います。なぜなら、PGAツァー・プロたちの多くが口にする"I played one shot at a time."は「一打、一打に集中してプレイした」と訳せるので、つづめれば「一打入魂」になるからです。

最近の私は、アイアンを打つ時、ボールの直近のターゲット側の地面を見つめながら、「一打入魂」と内心で呟きながらスウィングを開始します。ボールを見つめて打つと掬い打ちになりますので、ボールの前方を見る訳です。そこがスウィング弧の最低点となるため、多少ボールを押し潰し、ロフト通りの軌道で真っ直ぐ飛ぶボールが得られます。

「一打入魂」と呟くと、心が引き締まり、その一打への真剣味が増幅され、会心の一打が生まれます。

(September 16, 2018)



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