May 21, 2017

完璧なストロークを望んではいけない

 

「80を切る・虎の巻」(tips_60.html)のPatrick J. Cohn, Ph.D.(パトリック・コーン博士)に、PGAツァーのプロ・テストまで受けたことがあるというスポーツ心理学者Robert K. Winters, Ph.D(ロバート・K・ウィンタース博士)が加わって出版されたパッティングの心理学。

'The Mental Art of Putting'
by Patrick J. Cohn, Ph.D. & Robert K. Winters, Ph.D. (Taylor Trade Publishing, 1995, $16.95)

「どんなスポーツでも、運動選手は目前の課題に真剣に集中し、状況に自動的に反応する時に最高のパフォーマンスを達成する。しかし、ゴルフのパッティングは、野球の打者やバレーボールのスパイクのように動的アクションに対するリアクションを必要としない。とはいえ、あなたがそうしようと思えば最高のパフォーマンスを生じさせることは可能だ。打者は投手がボールを投げた後、考えている暇などなく、ただひたすら反応しなければならない。ボールがホームプレートに達するのは、投手の手を離れてから約0.4秒後である。打者は投球の識別に0.2秒費やし、次の0.2秒で振る決定をし、ボールに合わせてバットを動かす。このように、打者は彼のボールを打つ経験と本能を頼りにしなければならない。彼がどうしようかなどと考えたりしたら、後の祭り、ボールは既に捕手のミットに納まっている。

あまりにも多くのゴルファーがグリーン上で、分析し過ぎたり、考え過ぎたりして麻痺状態に陥る。彼らはストローク法についてインストラクターが云ったことや、パットの成功・不成功などについて考え込み、自分自身を麻痺させてしまう。野球の打者のように外部(飛んで来るボール)と狭い範囲に焦点を合わせるのがベストだ。何故なら見るものに反応すればいいのだから。あなた自身の内部に焦点を合わせたのでは、あまりにも機械的になったり、自分自身を凝視するようになってしまう。テニスのプレイヤーが動くボールを見つめるように、自分の外部に狭めた焦点を合わせ続ける時、人は最高のプレイが出来る。

あなたのパッティングに対する姿勢も単純化すべきである。あなたが先ずしなければならないのは、自分に言葉による指示を与えるのを止めることだ。機械的動作について考えるのを止め、あなたの経験と本能に任せる。

パット名人たちの多くは、ボールを意図したラインに乗せる業務の遂行に集中する。彼らはそれがカップに入ることを知っているものの、成功させようとしゃかりきになったりしない。入るか入らないかという結果に焦点を合わせるのは優先事項ではないからだ。彼らが正しく業務を完遂すれば、ボールはカップに沈む。パット名人たちはラインの選定とそのラインにボールを乗せる業務に集中する。

 

あなたが正しいラインを選んでそれにボールを沿わせて転がしたら、あなたの仕事はそこで完了である。それ以後に起ることはあなたにはコントロール出来ない。仮にあなたがパットに失敗したとしても、自分が選んだラインにボールを転がせたのであれば、あなたはパットに成功したのだ。全てを完璧に遂行したとしても、それでもミスすることは珍しくないのである」

[icon]

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が「パットには成功した。ただ入らなかっただけだ」という有名な言葉を発したことがありますが、それは上のようなことだったんでしょうね。正しくラインを読んでそのラインにボールを転がしても、スパイクマーク(現行ルールでは修復出来ない)などに遭遇すれば、ボールはラインから逸れてしまいます。スパイクマークを迂回することは不可能なので、目をつぶって打つしかありません。Jack Nicklausは泣き言を云わない人ですから、「スパイクマークのせいで失敗した」とか「スパイクマークを残した奴を八つ裂きにしたい」などと云わず、単に「パットには成功した。ただ入らなかっただけだ」と述べたのでしょう。

私は、つい「入れたい」としゃかりきになり、機械的動作の完全遂行に集中するタイプなので、上の指摘は非常に耳が痛い。リオのオリンピックの女子の平均台を見ましたが、あれなどはまさに機械的動作の完全遂行の連続ですよね。しかし、それを機械的でなく優雅に美しく実行しなきゃならない。ロボットのような、あるいは操り人形のような動作ではなく。パッティングもガチガチに硬直した動作でなく、優雅にスムーズな動作が必要です。それには、パイロットがコックピットでチェクリストを読み上げつつスウィッチを切り替えるように(心の中でストローク手順を唱えながら)身体を動かしたのでは駄目なのです。手順は身体に滲み着いていなくてはならず、ボールに歩み寄ったら箸で御飯を食べるように、チェックリスト無しで自動的に腕・手が動かなくてはならないのです。

(May 21, 2017)

Fred Couples(フレッド・カプルズ)の気楽にパットせよ

 

'Total Shotmaking'
by Fred Couples with John Andrisani (HarperPerennial, 1994, $15.00)

「大抵のゴルファーは、そのレヴェルに関わらず、グリーン上で余分のプレッシャーを自分に与える。彼らは、それがU.S.オープンであれクラチャンであれ、2ドルのナッソーであれ、自分に語りかける、『このパットを沈めなきゃ』と。私は、この自分に負わせる重圧は、ゴルファーを助けるものでなく害するものだと考える。

目下のパットの重要性を考えることによっていいストロークが出来るとは思えない。あなたはただ、あなたに可能な最良の読みを遂行し、あなたに可能な最良のアライメントをし、次いで最高にリラックスし、とはいえあなたに可能な適切なストロークをする。その後は単純に結果を受け入れるのだ。ボールはカップに沈むか沈まないかどちらかである。あなたは完全に完璧な読みをしたかも知れないが、(あなたが気づかない間に)ボールは転がり始めてからスパイクマークを打ち、ラインを逸れてしまうことだってある。逆に、ミスして当然のパットがグリーン面の不完全な凸凹の上を転がってカップに転げ込んだりもする。大方のゴルファーは深く理解しないのだが、ブレイク(運・不運)は一方だけでなくどちらにも転ぶものだ。

心に止めておくべき最も重要なことは、どんなに完璧にストロークしようが、それがカップに入るという保証はないということだ。刈られたばかりで完璧に整備されたように見えるグリーンでさえ、ボールの転がりに影響する凸凹や虎刈り部分がある。そのどれもが微かにボールを動かし、ど真ん中からボールをカップに沈める代わりに、僅かに左に向かって転がりリップアウトさせてしまったりする。

グリーン上で気楽に取り組む態度を学べば、あなたは長期に渡ってはパッティング巧者になれると信ずる。ゴルフは楽しむべきものだ。ボールにあなたに可能なベストの転がりを与えよ。そして、それを何度も繰り返す。ミスしたら、なぜミスしたのか数秒間考えてもいいが、その後すっぱり忘れることだ。そのパットはもう過去のものと化した。だったら、次のティーに向かって、いいスウィングをしようと努力することだ。

 

どのストロークでも上のようにプレイすれば、外部からのプレッシャーによる干渉を受けることなく、本能にパットさせることを学ぶことになる。グリーンで幸運と不運をどちらも受け入れれば、常にいいスコアでラウンドを終了出来ることだろう」

[icon]

上の記事を読んだ数日後のラウンド。No.3(270ヤード)パー4の私の二打目は、ピン奥10メートルへ。10メートルと云えば、仲間も自分自身でさえも成功するなどと思えません。まして、不完全な凸凹や不運もあるわけです。私は、同じく2オンしている他の二人ののどちらかがバーディを仕留めるだろうという安心感で気楽にパット。やや下りで僅かに左へ切れるラインと読んだ通りに転がったボールは、ど真ん中からカップイン、バーディ! Fred Couples(フレッド・カプルズ)は正しい。ゴルフは生か死かという必死の形相でするものではなく、非の打ち所のない完璧なストロークをしようとすべきものでもないことが証明されました。

【参考】「Fred Couples(フレッド・カプルズ)の ゴルファーよ、気楽にプレイせよ」(tips_154.html)

(May 21, 2017)

楽観的にパットすべし

 

筆者Billy Casper(ビリィ・キャスパー、1931〜2015)はメイジャー三勝を含め全69勝を挙げ、ゴルフ名誉の殿堂入りしているプロ。

'Secrets of the Golfing Greats'
edited by Tom Scott (A.S. Barnes, 1965)

「パットに上手くなるにはテクニックだけでなく、楽観的であることが最も重要な必要条件だ。それは身体の筋肉のワンセットのように開発され訓練され得る心の状態である。上手にパット出来るようになるには、どうすればパットに成功出来るかを考えなくてはならない…どんな風にどこへミスするかという悲観的な考え方ではなく。どのパットも沈められるという態度を育てよ。その態度はパットに成功するという能力に至上の自信を作り出す。それは悲観的な想念を心から追い出し、あなたのメンタルな姿勢に楽観的な想念が優位に立つようにする」

[icon]

「P³(心と身体の統合)・パッティング篇」(tips_18.html)で紹介したスポーツ心理学者Dr. Nick Rosa(ニック・ローザ博士)の自己催眠オーディオ・テープは、まさにこのメンタルな自信構築を目指しています。博士の示唆で自分のベストのパッティングを思い出し、それを心のDVDに焼き付け、グリーン上で再生するという仕掛けです。

人間の脳には繰り返される運動とその結果が大きな影響を及ぼすようです。Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)がパッティング・スランプに陥って自信を失った時、彼は練習グリーンで長時間30センチ(!)のパットばかり練習し、パットの成功を心に刻み、自信を回復させたそうです。たった30センチの距離なら子供にだって(猿にだって)パット出来るでしょう。それで自信がつくのなら、Arnold Palmerだけでなく、どんなゴルファーにも役立つ筈です。

 

(May 21, 2017)



?[Anim

 Copyright © 1998−2017   Eiji Takano    高野英二
[Mail]
 Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.