August 16, 2017

ゴルフ戦士たるべし

スポーツ・ライターMichael Clarkson(マイケル・クラークスン)による戦闘的ゴルフの勧め。

'Pressure Golf'
by Michael Clarkson (Raincoast Books, 2003, $16.95)

「あなたが真剣な競技者であるか、あるいはそうなりたいと願望しているのであれば、自信を持つとか対応策を講じておくなどの生易しい段階を超えるべきだ。

ゴルファーがあたかも戦士のように感じ、対戦者やコースを支配する感覚を抱く時、人間の数百万年に及ぶ戦争と生存との産物であるパワフルな緊急警戒態勢が作動し、ドーパミン(アドレナリンの前駆体で攻撃精神を生む)やテストステロン(筋肉の増加作用を持つ)などのホルモンが体内で噴出する。これらのホルモンはしばしば扱いにくくゴルファーを苛つかせたり怒らせたりする。だから、一般的に穏やかなゲームであるゴルフのテーマとして取り上げるには、これはいささか取扱注意の嫌いがないではない。

偉大なゴルファーたちが自分たちを戦場に赴く戦士と看做す好例は、ヨーロッパ・チーム対アメリカ合衆国・チームによるマッチプレイ対決Ryder Cup(ライダー・カップ)であろう。日頃落ち着いたプレイをするTom Lehman(トム・レーマン)でさえフィスト・パンプしたり、Justin Leonard(ジャスティン・レナード)が宙に跳び上がったりする。ヨーロッパ勢も、しばしば期待以上のプレイを見せる。1999年にマサチューセッツ州Brookline(ブルックライン)で開催されたRyder Cupについて、Tiger Woods(タイガー・ウッズ)は次のように云った、『自国でRyder Cupに勝てるなんて凄いことだ。勇気と度胸の賜物だ』 それはアメリカ・チームが4ポイントの差を引っくり返した一寸した奇跡であった。最終日前夜のミーティングで、アメリカ・チーム全員がスポーツマンたちからの鼓舞のメッセージを受けたが、その締めくくりは当時大統領候補であったGeorge W. Bush(ジョージ・W・ブッシュ)が朗読したWilliam B. Travis(ウィリアム・B・トラヴィス)が書き遺した『死の勝利』と題された手紙であった。William B. Travisは、メキシコ軍に包囲されたアラモの砦を死守せんとして戦死した指揮官で、手紙には『私は降参も退却もしない。可能な限り留まり、一兵士として国と名誉のために死ぬ覚悟である』と記されていた。

 

PGAツァーで二勝を挙げたNotah Begay III(ノタ・ビゲイ三世、アメリカ・インディアンの末裔)は、アマチュア時代の重要なマッチ・プレイ対戦に、インディアンが戦闘に赴く際に用いたメークアップを顔に施した。

Tiger Woodsはトーナメント最終日に赤いシャツを身に着ける。それは闘牛の色であり、大胆さの色である。

LPGAツァー・プロのKarrie Webb(カリー・ウェブ)は戦闘を好む。彼女は云う、『もちろん、胸はどっきんどっきんするし、身体中をアドレナリンが駆け巡るわよ。でも、わたしはその感覚が好き。その状況を怖がったりしない』

自信だけでなく、ゴルフには勇気も必要だ。真の勇気は恐れを感じつつも、それを乗り越えて戦闘へと突き進むことである。恐怖が緊張やビビりの原因となるのではなく、失敗したら人々があなたをこき下ろすようなタフなショットに立ち向かうのが本当の勇気だ。Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)は、いくつものメイジャー・トーナメントのプレッシャーで動揺したものだ。2001年のNabisco(ナビスコ)選手権で、彼女はヴァイザーのツバの裏に自分だけに見えるように『恐れるな。突撃せよ』とスウェーデン語で書いた。私はこれがスーパー・ゴルファーの心境だと思う。

一部の人々の目に愚かに見える結果を招いたとしても、彼らはプレッシャー下で一か八か挑戦することを恐れない。私の見解であるが、Sorrenstam(ソレンスタム)、Woods(ウッズ)、Nicklaus(ニクラス)らはなにものをも恐れない。問題は博奕を打つ時にあまりにも弱虫に見えるかどうかだ。彼らが成功するかどうかはどうでもよいことだ。挑戦を決意した時、彼らは既に恐怖を打ち負かしたのだから。

 

あなたが戦士の勇気を見せるのがthe Masters(マスターズ)のグリーン・ジャケットのためか,クラチャンのためかは問題ではない。あなた自身の恐怖(あなたの弱点と必要性)に直面することが、最大の試練なのだ」

(August 16, 2017)


Byron Nelson(バイロン・ネルスン)の勝利の秘訣

“モダン・ゴルフの祖”Byron Nelson(バイロン・ネルスン、1912〜2006)は、1945年にPGAツァー11連勝、年間計18勝を挙げるという記録を樹立した後、「念願だった牧場購入資金が貯まったから」…と突如競技生活から引退し、世界を驚かせました。彼が明かす勝利の秘密。

[Byron]

'Shape Your Swing The Modern Way'
by Byron Nelson with Larry Dennis (Golf Digest, 1976)

「トーナメントが始まってもいないのに、妻に『次のトーナメントは頂きだ』と語ったことが何度もある。妻が『どうしてそう云えるの?』と聞いた時、私は答えたものだ、『なぜって、何度打っても正確に同じ距離に打てるからさ』と。

それはあまり知られていない重要なポイントなのだ。キャディ目掛けてボールを打つ時【註】や、キャディがいなければボールの着地点を選んで見守るべきだ。ボールは少し右や左に逸れるかも知れないが、もし毎回同じ距離に着地するなら、それはあなたがいいスウィングをし、ソリッドにボールを打っていることを意味している。その時、あなたは自分のスウィングを信頼し始めることが出来る。

【編註】当時、Ben Hogan(ベン・ホーガン)やGen Littler(ジーン・リトラー)などの名人たちは、練習場やゴルフ・コースでボールの着地点にキャディを立たせてキャディ目掛けてボールを打ちました。キャディは左右どちらかに一歩動くだけでボールをキャッチ出来たそうです。

多くの人々は練習場だけがゴルフを学ぶ場所だと考えるが、私はそうではない。私はそれ以上のことをしていたし、他のトップ・プレイヤーたちに聞いても私と同じように感じていた。

夜、ベッドに横になって心の中で自分のスウィングを思い描くのだ。こういう時、なぜか物事がより鮮明に見え、自分が犯していたミスや遂行したい正しいスウィングなどの全体像がよりよく得られる。私が生涯で得たベストのレッスンのいくつかは、夜ベッドの中で自分のゲームについて考えている時のものだと考えている。

あなたには、結構なプレイヤーが夜横になって自分のゲームのことを案じている姿が奇妙に思えるかも知れない。実は、それこそが彼がいいプレイヤーである理由なのだ。彼は彼の仲間よりも時間と努力を傾け、それによって仲間たちの一歩前を行くのである。

あまり議論されたことがない真の勝利者の特徴の一つは、彼が絶対に不注意なショットをしないということだ。例えば、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)やGary Player(ゲアリ・プレイヤー)らが不注意なショットをしたのを見たことがない。これは誰にとっても勧められることだが、特にチャンピオンはこの態度を身についていなければならない。一打や二打の浪費が勝利と敗北を隔てるというだけでなく、不注意はさらなる不注意を生み、じきにそんな風にプレイするのがあなたの性癖となってしまう恐れがあるからだ」

(August 16, 2017)

Gene Sarazen(ジーン・サラゼン)の叡智

 

Gene Sarazen(ジーン・サラゼン、1902〜1999)は、生涯にメイジャー七勝を含む計48勝を挙げた名人。1935年のthe Masters(マスターズ) No.15でのダブル・イーグル(アルバトロス)達成、サンドウェッジを発明した人としても有名。

'Thirty Years of Championship Golf'
by Gene Sarazen with Herbert Warren Wind {Prentice-Hall, Inc.,1950)

「大方のゴルファーは、パッティングの練習を10メートルぐらいから始め、それから短い距離へと移っていく。私が思うに、それは逆だ。30センチ前後から始めて、次第に5メートル前後に後退するのが賢明である。その方がスムーズなストロークを構築出来る。ゴルファーたちは練習でもパットを捩じ込もうと考え過ぎる。Horton Smith(ホートン・スミス、1908〜1963、メイジャー二勝を含む36回のツァー優勝)のようなパット名人たちは、練習の際はストロークだけに集中する。彼らはボールを正しくストロークさえすれば良い結果が得られると知っているのだ。

[Sarazen]

私が常に苛つくのは、ロッカー・ルームで『だが、パットがいけなかったんだ』と嘆く輩に遭遇する時だ。誰だってボールは打てる。全てのショットが合算される際、1メートルのパットも250ヤードのドライヴも同等である。パターは杓子であり、ミルクとクリームとを峻別する道具だ。偉大なチャンピオンたちは、素晴らしいパット名人でもあった。Walter Hagen(ウォルター・ヘイゲン)、Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)、Byron Nelson(バイロン・ネルスン)、Ben Hogan(ベン・ホーガン)等々。Harry Vardon(ハリィ・ヴァードン)はこの定義の例外であるが、彼が優勝する時はパットも好調であった。パットが低調では、チャンピオンはチャンピオンとして留まれない。1946年のU.S.オープンで、Byron Nelsonはティーからグリーンまでは完璧なゴルフをして参加者中のベストであったが、彼が優勝出来なかったのは、71ホール目の3パットや72ホール目の救いようのないパットのせいではなかった。四日間全体のパットの出来が、彼の他のショットの素晴らしい水準と肩を並べていなかったからだ。

ゴルフ道具全てに思慮深くあるべきだ。クラブがどれもあなたにとって余所者でなくなるよう、親密な仲にならねばならない。多分、あなたはあまりに多過ぎる数のクラブを担いでいるのかも知れない。私の現役時代の初期に、なぜ数多くのソリッドなショット・メーカーが輩出したかという理由は、ゴルファーたちがたった八本か九本のクラブだけでプレイしていたため、それら全てを熟知していたせいだ。私が三度目のPGA選手権に優勝した時は、五本か六本のアイアンしかバッグに入れていなかった。私は、私の自信を喪失させるクラブは村八分にした。トーナメントの間にクラブをバッグから抜き出す時、私は旧友と共同作業をする心地だった。『わが竹馬の友よ、…』私は(例えばの話)マッシー【編註:5番アイアンに相当】を握りながら感じる、『こいつには随分世話になったもんだ。こいつは頼りになる相棒なんだ』

今日のプレイヤーたちが犯す重要な過ちは、どのショットも完璧なライで練習することだ。ボールを打つのでなく掃くようでは、正しいスウィングを身につけることは出来ない。あなたはいいライ、貧弱なライ、完全に劣悪なライなどから打つ練習をすべきだ。

一般ゴルファーの最も大きな障害は、一足飛びに上達しようとする性急さである。基礎も理解しないうちから、いいスコアで廻ろうとする。もちろんその不可避的結果は、いいスコアになどにならないということだ。

いいゴルフをするには知性が必要だ。意欲的なゴルファーは練習の仕方と道具について、明確な考えを持つべきである。そういう人はコースにおいて自分の限界を知り、18ホール全部で完璧なティー・ショットを打てるなどと期待しない。Cary Middlecoff(ケアリ・ミドルコフ、1928〜1998、メイジャー四勝を含む41回のツァー優勝)やLloyd Mangrum(ロイド・マングラム、U.S.オープンを含む36回のツァー優勝)でさえ、そんな期待はしていない。意欲的な人はまた、打つ前に36もの人体部品が手筈通り機能するかどうか考えたりして、集中心を打ち砕いたりしない。彼が理解出来ないような失敗を犯したとしたら、それは彼がプロとしての能力がある徴候(しるし)である。

意欲的ゴルファーは、グリップがゴルフ・スウィングの基礎であることを忘れない。基礎工事が適切なら、家は何年でも堅固なままだが、基礎が悪ければいくら部屋を綺麗に飾り立てても、いつの日か家は倒壊する。私は、平均的ゴルファーが分別を持ってゴルフ・ゲームに接するなら、彼は早晩間違いなく平均を遥かに上回る成長を見せると確信している。

1922年にイリノイ州のSkokie C.C(スコーキィC.C.)で開催されたU.S.オープン。私はグリーンでの練習に時間をかけた。練習グリーンではなく、コースのグリーンである。夕暮れ前、私は難しいグリーンの一つに歩いて行き、一時間ほど芝目とブレイクとに慣れ、その傾向を記憶したと思えるようになったら、次のホールに移動した。これはトーナメント前の準備として私が発見した方法であり、真剣なゴルファー全てに勧めたいものだ。練習グリーンの多くは助けになるよりは、妨害するものと云ってよい。本グリーンにそっくりな速度、芝の質、勾配を備えた練習グリーンを用意しているのは、Oakmont(オークモント)とAugusta National(オーガスタ・ナショナル)ぐらいしか思いつかない。【註】最初の三〜四ホールのグリーンを熟知していれば、スタート直後の不安を解消してくれる。

【編註】この本が出版されたのは1950年なので、その後U.S.オープン開催コースの練習グリーンは、USGAの示唆・指導によって改善されたであろうと推測されます。しかし、私がプレイしているようなパブリック・コースの練習グリーンは、昔も今も変わらず貧弱なものかと思われます。

ゴルフの最も危険な風潮の一つは、このゲームを実際のもの以上に謎めいた、とても難しいもののように思わせることだ。色んな技術的ナンセンスを読まされる読者は、途方に暮れ、やる気を失くし、びくびくして暮らすことになってしまう。私は何度もインストラクション本の出版をオファーされたが、いつも固辞して来た。その理由はゴルフ・インストラクションに一冊の本全部を埋め尽くす必要はなく、一章だけで事足りると思うからだ」

(August 16, 2017)



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