August 06, 2017

なぜ好調は二度続かないのか?

実は私がこの症状の典型なのです。二度好調が続いた試しがない。いいラウンドの後は必ず不調。次の記事はスポーツ心理学者Tom Dorsel, Ph.D.(トム・ドーセル博士)によるプロの好・不調に関するものですが、何らか参考になるのではないかと期待して読みました。

'The Complete Golfer'
by Tom Dorsel, Ph.D. (Allyn and Bacon, 1996, $19.00)

「私がよく受ける質問の一つに、トーナメント初日に目の覚めるようなスコアを出した者が、しばしば二日目でお粗末なラウンドをするのは何故か…というものがある。これはアマチュアにも共通する傾向だが、U.S.オープンのような大トーナメントでも、無名のプレイヤーが素晴らしい第一ラウンドをしながら、二日目にずるずると後退して行くのは稀ではない。

そういう現象が何故起るのか、いくつか可能な説明はあり得る。第一に、ゴルフは難しいゲームであり、いいラウンドを一回だけでなく、二回連続させるというのは大変なことなのだ。安定したスコアで廻っている場合でも、実は内容が異なる傾向がある。ある日はパーオン率がよくて、次の日はパッティングがよく、別の日はラッキーが積み重なるとか。だから、いいスコアを繰り返せないのは、ツイてなかっただけとも云える。

二つ目は、いいスコアを連続させる可能性は、プレイヤーの能力にもよるのだ。初日に生涯ベストのラウンドをした経験不足のプレイヤーは、経験豊富なプロに較べて二日目で後退し易い。

三つ目は、初日は有名・無名に関わらず誰もがゼロからスタートするので、(観客やマスコミのお気に入りを別として)誰一人大きな期待を寄せられたりしない。しかし、一旦リーダーボードのトップに位置すれば匿名のヴェールは剥がされ、突如スポットライトが当てられる。これはプレイヤーが抱いていた最適のやる気の度合いを超えるプレッシャーを生み出し、パフォーマンスを阻害し始めてしまう。

四つ目は、初日のいいスコアに有頂天になったプレイヤーが、自分に期待し過ぎ、もっといいスコアを出そうとするから…という解釈だ。プレイヤーはいい成果を収めた初日の作戦に固執すべきなのに。

 

いいスコアをリピートしたければ、大それた目標ではなく小さな目標を達成しようとすることから始めるとよい」【編註:Al Geiberger(アル・ガイバーガー)がPGAツァー初の59を達成出来たのも、八ホール連続アンダー・パーのタイ記録を作ろうという、比較的小さな目標に挑戦したからでした】

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私の場合、よいラウンドの後、「自分は上達したんだ」と思い込み、次のラウンドでも同じレヴェルの成果を期待してしまう傾向があります。それは、よかった時の緊張と真剣さを欠き、「どうせうまく行く」という生ぬるい態度に繋がります。最初の子供は真剣に育てるが、二度目の子育ては野放し。初めてのレシピは計量カップや計量スプーンを用いて正確に作るが、リピする時は目分量で作っちゃう。二番目の子供は伸び伸びと育ち、二回目の料理もそう大怪我にはならない。しかし、ゴルフはフェースの角度が1〜2°変わってもカップから逸れてしまう。手抜きは結果に大きく影響します。

私の場合、「自分は上達した」という幻想、自信過剰が次のラウンドを駄目にする原因だと思っています。あるいは、よいスコアで廻れた時は、たまたま一度も林やバンカーに入れなかったとか、多くのホールで偶然易しいラインが残るように寄せられた等々、幸運な要素に恵まれたのであって、自分の腕前とは無関係だったということに気づかないのかも知れません。

必ずとは云い切れないものの、絶不調なラウンドの後には良いラウンドが続くことが比較的多い。悪いラウンドはお粗末な戦略・お粗末なショットの集積であり、そのひどさが骨身に滲みているので、必死に正道に立ち返ろうとするからです。やってはいけないこと、忘れていたポイントを思い出す。まこと、われわれのゴルフは忘却との闘いと云ってよく、次から次へと重要なことを忘れ去ります。良いラウンドが続かない原因の一つは、良いラウンドの出来に慢心し、野方図になって基本を失念するせいと云えるでしょう。

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以下はスポーツ心理学者Patrick Cohn, Ph.D.(パトリック・コーン博士)の解説。

'Going Low'
by Patrick Cohn, Ph.D. (Contemporary Books (2001, $22.95)

「60を切るような勢いを見せたツァー・プロが、翌日お粗末な、あるいは凡庸なラウンドをする例を毎週目にする筈だ。プロでさえ、膨らんだ期待に免疫ではないのだ。Notah Begay(ノタ・ビゲイ)【註】は、1998年にニュー・メキシコ州で開催されたNike Dominion Open(ナイキ・ドミニオン・オープン)の二日目に59を達成したが、三日目74、最終日も74で、六位に終わった。彼は学生時代1994年のNCAAトーナメントで62という記録を作ったが、その後やはり73、73という成績で六位に終わっている。

【編註】Notah Begay III(ノタ・ビゲイ三世、1972年生まれ、写真)は、ニュー・メキシコ州生まれのアメリカン・インディアン。Stanford(スタンフォード)大学時代にはTiger Woods(タイガー・ウッズ)と同じチームで活躍。Nike(ナイキ)ツァーを経て、PGAツァーに参加し、四勝を挙げた。現在the Golf Channel(ゴルフ・チャネル)の解説者の一人。

彼は三日目と最終日の74、74について、彼のプレイが日々安定していないせいだと結論づけている。彼にとっていいプレイが出来るのは、心構え、リズム感、パットの成功、幸運なブレイク【編註:この場合の「ブレイク」は、ボールが地面で撥ねたり木に当たったりして方向転換すること】に恵まれること…等に左右される。これらの不確定要素は日々変化する。

生涯ベストのラウンドに続いて、それを続けるのがなぜ難しいかというと、常に現在のラウンドを生涯ベストのラウンドと比較してしまうせいだ。ベスト・スコアは、良いパッティング、適切な思考と情念、良いショットの連続、そして、何度かの幸運なブレイク等によって生じる。その後のラウンドでは、毎回ベストのラウンドと比較してしまうため、ゴルフは気楽なゲームでなくなってしまう。以前はエフォートレスなプレイだったのに、苛々し易くなる。何故なら、前のようにパットが沈まなくなるからだ。ベストのラウンドのように幸運なブレイクにも恵まれない。かてて加えて、あなたの高められた期待は、インスタントな結果が出ないため欲求不満の原因となる。

 

生涯ベストのラウンドを基準にして、それと比較しながらプレイしてはいけない。コース・コンディションも、天候、運、あなたの思考法、感覚、行動など全て、日々同じではないのだ。ゲームの各分野の向上を図り、弱点を見極めてそれらを克服し、強みを伸ばす。ゴルフ・コースでは、何が可能で何が不可能かなどの予断を排除し、一打一打にベストを尽くすことに焦点を合わせる。次回、あなたがゾーンに突入したり、リズムを感じ取れたら、その感覚を受け入れ、ラウンド終了まで波に乗ることだ」

(August 06, 2017)

パットの教え魔に御用心

「80を切る・虎の巻」(tips_60.html)のPatrick J. Cohn, Ph.D.(パトリック・コーン博士)に、PGAツァーのプロ・テストまで受けたことがあるというスポーツ心理学者Robert K. Winters, Ph.D(ロバート・K・ウィンタース博士)が加わって出版されたパッティングの心理学。

'The Mental Art of Putting'
by Patrick J. Cohn, Ph.D. & Robert K. Winters, Ph.D., Taylor Trade Publishing, 1995, $16.95)

「誰もが友人に教えたがる。パット巧者がカップの左にミスすると、同伴競技者が『プルしたね。振り子の動作を確実にするため、肩の位置を変えたら?』などと助言する。多くのプレイヤーは、何がミスの原因だったのか考えもしないで、次のパットで変更を試みる。それに対し、賢いプレイヤーはストローク法を変えたりすることなく、過去数回のパットを仔細に検討する。この場合、他人の助言にもかかわらず自信が揺らぐことはない。

LPGAスターのHelen Alfredsson(ヘレン・アルフレドソン、スウェーデン)は、『あなたが得意とするものを信頼する必要があると思う。パットが思うように行かない時、色んなことを探し求めたりヒントを得ようとしがちになるが、それは心が消化不良を起こし、症状を悪化させることが多い』と云う。

こういう状況に、あなたならどう対処するだろう?あなたは、同伴競技者のあなたのパットに関する技術的意見に何でも耳を傾けるタイプだろうか?あるいは自助努力で修正するにはどうすればよいか、ベストの方法を知っているだろうか?パートナーたちの助言は善意からだとしても、彼らはあまりにも即断的に情報を提供するため、あなたのパッティングに害をなすことがあり得る。誰の言葉を聞くか、心すべきである」

 

(August 06, 2017)

映画'Tommy's Honour'(トミィズ・オナー)

 

21歳までに全英オープンに四回優勝したYoung Tom Morris(ヤング・トム・モリス、1851〜1875、息子の方)の伝記映画(2016年、製作国:イギリス、112分)。監督はJason Connery(ジェイスン・コネリィ、映画俳優Sean Connery[ショーン・コネリィ]の息子)。

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Young Tom Morrisの生涯がドラマティックであることは知っていましたが、映画にするほどだろうか…と半信半疑でした。それは杞憂で、美しく撮影されたスコットランドの風景とゴルフ草創期を彷彿とさせるプレイ場面と共に、ストーリィも楽しめます。

Old Tom Morris(オールド・トム・モリス、1821〜1908、父親)が、貴族らしきメンバーのキャディを務めるシーン。メンバーがチョロすると、「方向的には完璧でした」と褒めるのが可笑しい。

ゴルフをほとんど知らないカミさんも楽しんで最後まで見ていましたから、一般の映画ファン向けに配慮されていると云っていいのでしょう。反面、熱心なゴルフ・ファンにはいささかゲームのスリルが不足気味です。

当然とは云え、俳優たちがみな昔のスウィングを上手にマスターしているのに感心しました。しかし、現在のゴルフ・コースと較べると段違いに凸凹した雑なグリーンで、いくら撮影のために練習したからといって、パットが見事に成功するのは信じられない思いでした。コンピュータ・グラフィックスで処理したのなら話は別ですが。

二点ほど疑問があります。1868年当時にYoung Tom Morrisがバックスピンを発明したように描かれていますが、私は以下のWalter Hagen(ウォルター・ヘイゲン)の記事を読んでいました。

「(1920年にWalter Hagenが初めて渡英し、Jim Barnes(ジム・バーンズ、英国生まれのアメリカ人)と二人の英国のプロとエクシビション・マッチを行った時)英国人観衆はアメリカ人が多用するバックスピンのかかったショットを初めて見た。ピンの向こうに着地し、ころころと戻って来るボールを見たゴルフ・ライターの一人は『全くの偶然か、魔術に違いない』とコメントした」('The Walter Hagen Story' by The Haig, Himself [Simon and Schuster, 1956])

…ですから、その50年以上も前、1868年頃のYoung Tom Morrisがバックスピンをかけたというのは、眉唾に思えます。

もう一点、Young Tom Morrisの時代に、観客整理のためのロープが導入されたように描かれています。同じWalter Hagenの本に、次のような部分があります。

(1920年にWalter Hagenが全米各地でエクシビション・マッチを行った際)「クラブ役員たちはティー・グラウンドとフェアウェイにギャラリーを規制するロープの必要性を認めた。この時が、アメリカのゴルフの歴史において、ギャラリー規制のためのロープが使われた最初であった」

…1920年と云えば、Young Tom Morrisが没した45年後です。1870年代に英国のコースでロープが使用されていて、それが45年後までアメリカに伝わって来なかったというのは信じられません。英国のゴルフ・プロ多数がアメリカのコースに雇われてゴルフを教えており、英国のコース設計家たちも陸続とやって来ていたというのに。

私の推測は、あまりネタが無いのでバックスピンもロープもYoung Tom Morrisの功績にしようとした原作者と脚本家の勇み足だろうというものです。

【参考】
・「Hagen(ヘイゲン)、Jones(ジョーンズ)、Sarazen(サラゼン)時代のゴルフ事情」(tips_170.html)
・「ティー・ペグの発明と普及」(tips_172.html)

【おことわり】映画のポスターはhttps://upload.wikimedia.org/にリンクして表示させて頂いています。

(August 06, 2017)



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