November 09, 2016


心を身体から遊離させてスウィングする

 

この記事の筆者は『8ステップ・スウィング』や『Xファクター』などの著書で有名なインストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)。これは「Jason Day(ジェイスン・デイ)の秘密兵器」(10/30)に出て来た「無心」に通じる内容です。

'The 3 Scoring Clubs'
by Jim McLean (Gotham Books, $30.00, 2005)

「私のヒューストン大学時代のルームメイトで大の仲良しであるBruce Lietzke(ブルース・リーツキ)は、天才の一人である。彼はほとんど練習しない。何ヶ月もツァーを休んで家族と過ごし、なおかつプロフェッショナル・ゴルフで数百万ドルを稼ぐ。彼はツァーのどの常連よりもトーナメント参加数が少ないのだが、何年もの間、事実上休暇の合間に優勝して大金をせしめている。

彼の成功の理由の一つは、ボールを長く真っ直ぐに打つ能力である。私は、ろくに練習もしないでそんな風に素晴らしいボールが打てたら、どんなにゴルフが楽しいだろうと考えてしまう。ツァー・プロたちに、同時代の最高のボール・ストライカーは誰かと尋ねたら、多くはBruce Lietzkeと答えるだろう。彼らに『誰のようになりたいか?」と聞けばBruce Lietzkeを選ぶ筈だ。何しろ練習しなくていいんだから。

Bruce Lietzkeがドライヴァーを手にティーに立つ時、木とか特定の地点を狙ったりしない。その代わり、彼は心の中でプレイされるショットの形を見る。それは彼にとって中くらいの高さのフェードである。ひとたび彼がボールに向かってセットアップすると、彼は非常に変わったことをする。彼の心が身体を離れるのだ。つまり、彼は自分の身体を離れて7メートルほど上空に浮遊し、自分自身のショットを見守るのである。誰かが彼にそうしろと訓練したわけではない。それが初めて起った時のことを、彼は説明出来ない。彼はこの経験を疑問に思ったりせず、むしろ受け入れている。

私は重量挙げの選手がこの種の心体遊離を研究しているのを読んだことがある。これは、東洋文化において一層馴染み深いものだと思う。身体の無心な業務遂行を傍観者である自分自身が見守るというのは、プレッシャーを取り除き、スウィング動作から心を取り除く驚くほどパワフルな方法である。多くのゴルファーがこの禅のような解離を学ぶべきだと信ずる。特に、重圧に押し潰されそうな状況下では」

 

 

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スポーツ心理学者Dr. Nick Rosa(ニック・ローザ博士)制作のテープには、見事なティー・ショットを放った時や長いパットを成功させた場面を思い出し、その場面をヴィデオのように再現する(=自分が主役の映像を観客として見る)という視覚化が含まれています。これも一種の心体遊離です。

同博士の「ヴィデオ視聴を活かす」(tips_71.html)には、プロなどのスウィングのモデル映像を観客として眺めた後、今度は自分が主役でスウィングするという視覚化も紹介されています。

いずれにせよ、「心体遊離」、「無心」などの禅の境地がゴルフ・スウィングに役立つことは確かなようです。

車で初めての土地、初めての場所を訪れる時は、頻繁に地図を見たり、ガイドブックの説明を読み返ししたりしなければなりません。しかし、自分の家に帰る時は何も考えなくても本能的にいくつもの角を曲がり、ちゃんと家の前に着くことが出来ます。これぞ「無心」ですね。

私もドライヴァーが安定していれば「さっきと同じことをすりゃいいんだ」と何も考えません。同じように真っ直ぐなティー・ショットを放てます。フェアウェイ・ウッドからウェッジに至るまで、「さっきと同じことをすりゃいい」と思っている限り予測しないことは起りません。これが「無心」の恩恵です。しかし、「好調だから、一発ぶっ飛ばしてみるか!」と欲を出すと突如プッシュだのスライスが出たり、「よーし、あいつよりピン傍につけておれの実力を見せつけてやろう!」などと考えるとシャンクしたりします。「無心」でない心が身体のフリーな業務遂行を妨害してしまうのです。自滅行為。

自分の家に戻ることも、ドライヴァーを打つことも、何度も経験した自信の裏付けがあればこそ、何も考えなくても遂行出来るわけです。将棋やチェスの序盤と同じで、何も考えずにとんとんと手順を実行する。われわれのスウィングやストロークもこうあるべきなのでしょう。

(November 09, 2016)

ボールに魔法をかける

 

ボールがまるで人間であるかのように語りかけたSam Snead(サム・スニード)のメンタルtip。

'Golffirmations'
by Hugh O'Neil (Rutledge Hill Press, 2002, $16.99)

「自分が打ったボールが飛行中に、われわれは『もっと上がれ!』、『止まれ!』、『曲がれ!』、『そこで跳ねてくれ、頼む!』などと叫ぶ。われわれは、時として怒鳴り、時としてボールにおべっかを使い、多くの場合われわれはボールに懇願する。聞くところによれば、中には野卑な罵り方をする輩もいるそうだが、ボールを罵って軌道が変わるものなら、スコアも間違いなく少なくなる筈だが。

歴史上最もスムーズなスウィングの持ち主と信じられている飛ばし屋Sam Snead(サム・スニード)は、ちと異なる態度で臨んでいた。彼は打ち出す前にボールに語りかけたのだ。『ちーとも痛くないかんね』と彼は小声で囁く。『サムちゃんがキミにちょっとした遊覧飛行をプレゼントするだけだかんね』あるいは、『ヘロー、ディンプルちゃん。どっかりティーに座って馬鹿に暢気そうじゃないか。よーし、一緒に楽しもうぜ』

あなたもボールに向かってアドレスする際、次のSam Sneadの次の言葉に耳を傾けるべきだ。『ボールをあたかも人間のように扱うことによって、私は自分自身の気を紛らす。それによって、ああしようこうしようと考える時間をゼロにするんだ。パーとかバーディが欲しいのなら、あなたのボールに魔法をかけ、うっとりさせるべきだ」

 

 

(November 09, 2016)

念力でパットを沈める

「パッティングにForce(フォース)を使え」(tips_155.html)の、さらに上を行く方法です。Tiger Woods(タイガー・ウッズ)、Adam Scott(アダム・スコット)らのキャディを勤めたSteve Williams(スティーヴ・ウィリアムズ)は、現在引退し故郷のNew Zealand(ニュージーランド)で家族との生活を楽しんでいます。もし、また誰かのキャディをすることがあっても、それはパートタイムの仕事に過ぎないそうです。

彼はTiger Woods以前にGreg Norman(グレッグ・ノーマン)など何人かのツァー・プロのキャディでしたが、以下のはRay Floyd(レイ・フロイド)と組んでいた頃の話。

'My shot'
by Steve Williams with Guy Yocom ('Golf Digest,' July 2015}

「Ray Floydは、意志の力でボールを沈めることが出来ると信じていた。彼は私が彼と一緒にグリーンの上にいるだけでは満足しなかった。彼は云ったものだ、『Stevie(スティーヴィ)、おれと一緒に、あのボールがカップに入るように念じるんだ。おれたち二人して念じれば、入るチャンスが50%増える』と。

科学は、実際のところそんなことは起らないと告げている。だが、カップインを念じれば、頭からあらゆるネガティヴな想念を取り去るのは確かだし、何とも云えないよ。Ray Floydのかなり多くのパットは、カップの端を捉まえて最後の瞬間に落っこちるように見えたからね」

(November 09, 2016)


『フィーリング』でパット

スポーツ心理学者Dr. Deborah Graham(デボラ・グレアム博士)の下記の本に次のような部分があります。

'The 8 Traits of Champion Golfers'
by Dr. Deborah Graham and Jon Stabler (Simon & Schuster, 1999, $25.00)

「多くのゴルファー、特にかなり知的なゴルファーはゴルフ・コースで考え過ぎる傾向がある。彼らにとって、ラウンドの最初から最後まで知らず知らずにゴルフを機械的動作として、また分析の対象として扱うことが珍しくない。彼らはスウィングの機械的動作や、打つために必要とするテクニック、これから先のホールをどうプレイするか、あるいは前のホールでのミス等々を分析することを絶対にやめない。彼らは練習した技術や生来の能力を、視覚化やフィーリング、目前のショットに自ずと反応するような仕方によって解き放とうとは絶対しない」

 

 

 

私は自分が知的なゴルファーであると主張するつもりはありませんが、左脳派人間として動作を厳密に遂行したがり、またそのミスを分析したがるタイプであることは疑いようがありません。

上の引用部分は「コントロール・フリーク」という言葉を連想させます。私のゴルフ仲間にいるのです、そういうのが。根は悪い奴ではないのですが、何でもかんでも自分で仕切ろうとする。声はでかいし、態度もでかいので、蔭では彼を"drill seargent"(ドリル・サージャント、訓練軍曹)と呼んでいます(彼は実際に元軍人)。映画なんかでよく見るでしょう、新兵に怒鳴り散らし懲罰を与えるのが生き甲斐の奴。あれが訓練軍曹です。

「練習した技術や生来の能力を目前のショットに反応するような仕方によって解き放とうとしない」というのは、訓練軍曹的、コントロール・フリーク的態度であるように思います。しかし、左脳派人間に「目前のショットに自ずと反応する」というようなことは困難、というか不可能に近い。出来るのはコントロール・フリークの自分を黙らせることぐらいです。

ドライヴァーを打つ時に、頭の中で『スケーターズ・ワルツ』のメロディを繰り返すというアイデアは、以前に紹介しました。パッティングの際にいい曲はないか?と探していたのですが、ありました、その名もずばり『フィーリング』。1977年にハイ・ファイ・セットがヒットさせた曲です。厳密なメカニカル動作を強制しようとする訓練軍曹を、「♪フィーリン、ウォウ ウォウ ウォウ、フィーリン…」ととろけさせてしまうのです。これ中々いいです。「そんな懐メロ知らないよ」という世代に云ってもしょうがないですが(^^;;。

これは「でしゃばりコーチをブロックする」(tips_3.html)の応用篇であり、「無心」を目指す一法とも云えます。そして、左脳派に欠けている“フィーリング”に身を委ねさせるという作用もあります。

 

(November 09, 2016)




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