December 11, 2016


怒りはわれらを愚か者にする

 

スウェーデン出身のコーチPia Nilsson(ピア・ニルソン)は、Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)に「全てのホールをバーディで廻る」という'Vision54'という理念を植え付けた女性。彼女はアメリカ人女性インストラクターLynn Marriott(リン・マリオット)と組んで'GOLF54'というゴルフ・スクールをアリゾナ州に開設しました。当サイトでは二人のアイデア「二つのボックス」、「練習の害をなくせ」などを既に紹介済み。

'Every Shot Must Have a Purpose'
by Pia Nilsson and Lynn Marriott (Gotham Books, 2005, $22.50)

「ゴルフ・コースであなたが爆発させ得る最大の破壊力は、怒りである。自分が陥った不当な境遇に対して衝動的な反応を示すのは分別のある振る舞いとは云い難い。貧弱なスウィングをすると能無しになった気分にさせられるし、不運なバウンドはわれわれを不幸のどん底に陥れる。だが、不運への最悪の反応は怒りである。それは引き続く劣悪なショットを100%保証する。お粗末な意志決定は怒りそのものを引きずり出す一本道である。

トーナメントで心ここにないプレイヤーを見掛けるのはお馴染みのことだ。彼は6番アイアンを使おうとして、間違って9番を引っ張り出し、とてつもなくショートして池のど真ん中にボールをぶち込んでしまう。【編者独白:この著者たちはいつどこで私のプレイを見ていたのだろう?】 簡単に云うと、怒りはわれわれを愚か者にする。怒りはわれわれの判断力を曇らせ、われわれの低次脳機能【編註:魚類が身体を動かすために使うような脳の機能】だけで反応させようとする。怒りは、われわれが高次脳機能【編註:動物が獲得した脳の機能】にアクセスすることを認めず、われわれを爬虫類や哺乳類レヴェルの脳で行動するよう瞬時に退化させる。

 

怒りは、身体に緊張と不安を作り出すホルモンの引き金となるだけでなく、そのホルモンが脳の部品を操業停止させ、間違った判断をさせる方向にわれわれを導く。ティーショットを林に打ち込み、怒りの激発によって二打目に無理なことをし、トリプルボギーになったことが何度あったことだろう。不調なドライヴァーによる挫折感は、次の一打でその失敗を帳消しにしようという試みに繋がる。それがどんな結果になるか、われわれは皆よく知っている。大抵の場合、博奕は木が演奏するキンコンカンという音を聞くか、ラフにボールを打ち込むのが関の山と決まっている。

頭に来るのは、こうしたケースの多くを振り返ってみると、どうしてフェアウェイに戻してボギー(あるいは1パットのパー)で手を打とうとしなかったのか不思議なことだ。怒りはパンドラの箱を開けるように、多種多様な災いを飛び出させる。それらは、悪しき判断、躊躇(ためら)いがちなスウィング、急速なテンポ、そしてターゲットへのラインをろくに見もしないという症候群だ。

怒りに対処するのは容易ではない。しかし、あなたの周りで何が起っているかを正しく認識すれば、怒りをコントロールすることは可能である。ある時、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のティーショットがディヴォット痕に入り込んでしまった。彼はどんな風に反応したか?後に、彼はこう回想している、『それは、私が伸び上がらないで打つことを助けてくれるだろうと思った』と。愚かに反応する代わりに、彼は悲観的状況を建設的に変えてしまったのだ。これこそ、コースにおける純然たる自己コントロールの好例である」

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十個の寄せワンを達成した日のことです。No.14(470ヤード)パー5で、先ずRoy(ロイ)がピンまで6メートルに3オン。続いて私が2メートルに3オン。他の二人はパー・チャンスも得られず傍観者となっています。Royは大幅ショートし、続けてパー・チャンスの2パット目も失敗。

傍観者の一人が、アドレスに入る私に「エイジ、それはパー・パットか?」と聞き、私が「バーディ…」と簡単に答えました。「おお!」その傍観者は賛嘆しました。もう一人の傍観者(チーム・キャプテン)が"Don't leave the cup."(カップの外を狙うな)と、短いパットのためのコツを呟きました。もとよりそのつもりだった私は返事も省略し、おもむろにストロークに入りました。うむむ!ボールは5センチほどカップを逸れ、1メートルもオーヴァー。キャプテンは"I said don't leave the cup."(カップの外を狙うなと云ったのに…)と呟きました。

話はここからです。チームのためにバーディが欲しかった私は、彼らをがっかりさせたこと、短いパットに失敗したこと等でカーッとなってしまいました。私はOKパットを沈める時のようにアドレスもちゃんとせず、ターゲットへのラインをろくに見もしないで2パット目をしました。そしてそれをまた外した時、私はチームの誰もまだパーを得ていないことに気づいて愕然!無頓着にOKパットを沈めるように打ってはいけなかったのです。他の三人は私の不可解なプレイに驚き、声も出ませんでした。私は3パット目でようやくボールを沈めました。傍観者の一人が「つまりボギーということか…」と呟きました。

上の記事にあるように、怒りが私の脳のレヴェルを爬虫類のそれにしてしまったのです。バーディでなく、せめてパーでもまだ褒められるプレイだったでしょうに…。その後、皆は何も云いませんでしたが、私は皆に申し訳ない思いで一杯でした。それまでチームに貢献したことが御破算になってしまいました。

18ホールのプレイを終え、他のチームが上がって来るのを待つ間、私はNo.14での不注意なプレイを皆に詫びました。一人は「あんたの活躍がなかったら、今日のわれわれのスコアは酷いものになってた筈だ。あんたはヒーローだよ」と慰めてくれました。

奇跡的にわれわれはその日のゲームに勝ちました。私は一安心。そして、学びました。教訓:《カーッとなって爬虫類になってはいけない》。

【参考】Pia Nilsson(ピア・ニルソン)とLynn Marriott(リン・マリオット)の記事:
・「二つのボックス」(tips_101.html)
・「練習の害をなくせ」(tips_108.html)
・「英雄たらんとするな」(tips_108.html)
・「ターゲットを水先案内人とせよ」(tips_108.html)

(December 11, 2016)

ビビりの構造

 

Tommy Bolt(トミィ・ボルト、1916〜2008)は1958年のU.S.オープン優勝ほか、全18勝を挙げており、ゴルフ名誉の殿堂入りしている名人。彼の渾名は"Thunder Bolt"(サンダー・ボルト、雷電)で、怒りっぽく短気で、試合中にクラブを投げたり、折ったりしたことで有名です。

'How to Keep Your Temper on the Golf Course'
by Tommy Bolt with William C. Griffith (David McKay Company, Inc., 1969)

「誰であれ(たとえパターを一度も持ったことのない人間でさえ)60センチのパットを沈めることが出来る。その人物が二、三度パットを沈ませた後、彼に『次のパットを沈められない方に1,000円賭ける』と云って、どうなるか見守って御覧。一般に"choke"(ビビり)と呼ばれる奇妙なゴルフの症候群が浮上し始める。その賭けの前の彼のストロークは自信に満ち、気楽でスムーズだったのに、今や彼は500カラットの石をカットしようとするダイヤモンド研磨工の集中心と厳粛さでラインと打つ強さを検討する。彼は過度に長い時間をかけ、それが筋肉を硬直させ、神経は緊張し始め、両手が引き攣り始める前にボールを打った方がいいと捨て鉢で考える迄に、既に悲観的な想念が忍び込んで来てしまっている。

彼がパットに失敗した時、腹を立てるのは不自然ではない。彼は自分自身がパットの妨害工作をした張本人であることを知っているからだ。彼が気楽にパターを用いた短い経験がパットを沈めるのは難しくないことを証明しており、実際に重要な時点で失敗した自分が許せない。無論彼が認識しないのは、彼が失敗したのはそれが極めて重要な時点であったことだ。

ビビる状況は絶えずゴルファーの前に立ちはだかる。それがU.S.オープンであれ、新鮮な空気を楽しむための日曜の9ホールの当てもない散歩のようなラウンドであれ…。60センチのパットは、ハンデ10のゴルファーにとってはバーディ・チャンス、ハンデ22のプレイヤーにとってはパー・チャンスであろうが、ビビりを生じるに充分な状況であり、ゆえに失敗は避けられない。だから、たった一人でさしたる目的もなくラウンドしていて、あなたの屈辱を目撃している者は皆無であっても、それが同伴競技者や数千のギャラリーの前であると同じように腹立たしくなる。

もちろん、ビビるのはパットに限定されたものではなく、チッピングにおいても単に突くようなショットで最も顕著である。だがビビりは、あなたが常人で思考能力を備えているなら、実際には長いのはドライヴから短いのは60センチのパットに至るまで、どのゴルフの一打にも重要な要素たり得る。思考は全てのビビり状況において蔭に潜む妨害工作者である。

 

このビビり症候群は常に長いスランプの原因となる。たまには、数週間から数ヶ月完全に哀れなラウンドとなり、ドライヴも、アプローチも、チップ、パットもまともでなくなり、何も期待出来なくなる。この状況は、あなたが心配し始める時、筋肉の緊張を継続させ、バッグの中の全てのクラブに悪影響を与える。多くの場合、ドライヴが悪党の親玉である。それはあるホールの最初の、そして普通スコアリングに決定的要素となるショットだからだ。

幸い、あなたのスランプはレッスン・プロか誰かによって何がいけなかったのかの指摘を受け、それを正せば常に終わりを告げる。そうなれば、自信が回復するにつれ以前のようにボールを上手く打てるようになり、ゲームのどの分野も向上を見せ始める」

【参考】Tommy Bolt(トミィ・ボルト)の記事:
・「クラブ投擲王Tommy Bolt(トミィ・ボルト)の助言」(tips_170.html)
・「パーなど相手にするな」(tips_170.html)
・「マスル・メモリを信頼せよ」(tips_172.html)
・「恐れを知らぬ若者のようにパットせよ」(tips_173.html)
・「君よ憤怒のウォーター・ハザードを渉(わた)れ」(tips_174.html)

(December 11, 2016)

Tommy Bolt(トミィ・ボルト)かく語りき

 

'My shot'
Interviewed by Guy Yocm {'Golf Digest,' November 2002)

「見物人たちは、プロが苦しむ姿にゾクゾクするものだ。それが、私がしばしばクラブを投げる理由だ。初めは怒りでクラブを投げた。しばらくするとそれは受けを狙った単純な芸になった。オーヴァーハンドでなく水平に投げれば、クラブシャフトが折れない。それは芸なんだよ。

投げた時、ドライヴァーは最も飛ばない。パターが最も遠くに飛び、ウェッジがその次だ。ボールの飛距離と正反対だ。

私が1958年にSouthern Hills(サザーン・ヒルズ)でU.S.オープンに優勝した時、われわれはまだ土曜日に36ホールをプレイするフィニッシュだった。日曜日は礼拝日だからプレイしなかったのだ。だが、七年後、USGA(U.S.オープン主催者)とTV局は礼拝日に金が稼げることを発見し、それが36ホール・フィニッシュの終焉だった。

アイアンを打つ時は長く薄いベーコンのようなディヴォットを取るべきだ。そうするには左右の手を同等の強さで打たなきゃならない。あなたのディヴォットが短く深いようだと、それは右手が強過ぎるせいだ」

(December 11, 2016)



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