222 Howard Street
Greenwood, MS 38917
Phone: 662-451-7800
開館日：月曜〜土曜 10:00 a.m.〜5:00 p.m.
入館料：ドネーション

ミシシッピ州のGreenwoodから北のテネシー州Memphisにかけては「ブルース街道」と呼ばれています。ブルースは黒人が弾き語りで、呟くように嘆いたり憂えたりした歌が始まりのようです。私はあまりこのテの音楽は好きではありません。淡谷のり子のブルースと違ってメロディアスでもなく、どれも同じように聞こえるし、大体陰気くさい。しかし、Greenwoodを紹介するのにブルースは欠かせないので、Greenwood Blues Heritage Museum & Gallery（ブルース展示館）というのに行きました。現在のオーナーは30歳の黒人の若者George（ジョージ）で、父親から施設を引き継ぎ、もっと大きなスペースに移転するんだと意気込んでいました。

このブルース展示館は“悪魔に魂を売って楽才を手に入れた”と云われる伝説的なシンガーRobert Johnson（ロバート・ジョンスン）に捧げられています。Georgeの父親はRobert Johnsonの著作権管理者だったそうで、ゴールド・ディスクなどが壁一面に飾られています。Robert Johnsonは27歳で夭逝しましたが、毒殺されたとか色々な説があり、おまけにお墓もあちこちに三つもあり、ひょっとするともっと増えるかも知れないとか。お釈迦様みたいな人です。

私が『公民権運動・史跡めぐり』の旅についてGeorgeに話すと、「Money（マネー）には行かないのか？」と聞かれました。MoneyというのはGreenwoodから10マイル（約16km）離れたところにある町の名前です。ここで1955年にある事件が起きました。北部から遊びに来た14歳の少年が、白人経営の食料品店で白人女性に向かって口笛を吹いたために、その女性の旦那らの手でリンチ殺人されたというものです。（この事件については【詳細 3】を御覧下さい）

Georgeが蔦に覆われた食料品店の写真を見せてくれました。「建物がまだあるのか！」私は急にMoneyに行く気になりました。「最近、この建物からドアが盗まれたんだ。どこで発見されたと思う？eBayでオークションに掛けられていたんだ。現在のオーナーが警察に連絡し、オークションは中止になった」とのこと。このオーナーは、この建物を公民権運動の展示館にしたがっているそうです。連邦司法省がこの事件の再審理を始めるというニュースを聞きましたので、この事件とMoneyの町はまた脚光を浴びることになるでしょう。Moneyの大半は広大な綿畑ですが、農業が機械化されたいま、あまり人口は多くありません。道路沿いにはポツンポツンと家があるだけです。確かにドアを失い、あり合わせの板で入り口を塞いだ建物がありました。写真を見ていなかったら通り過ぎるところでした。

町の住人に、少年が滞在した家の所在を聞こうとしました。白人に聞くとヤバそうなので黒人を探しました。「食料品店と川の写真を撮った。他に何かあるだろうか？」と聞くと、「あとは俺の写真ぐらいだろ。あはは」と云います。少年が滞在した家はもう無く、事件に関係するものは皆無のようです。立ち話していると、テネシー州から来たという旅行者（黒人）までやって来ました。やはり、Moneyへの関心が高まっている証拠です。ところで、後で知ったことですが、司法省の再審理で追及する相手は数人の殺人・死体遺棄幇助者で、それには二人の黒人が混じっているのだそうです。「白人に聞くとやばい」だけでなく、本当は黒人もヤバかったのでした。

【旅のメモ（Canton）】