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2012年に出版されたJames Meredithの本を読みました。この本に、彼の日本滞在時の詳細が書かれており、この時の体験が彼のその後の人生を決定したと云ってもいいほどの影響を与えたと云っています。彼は九年間米空軍に在籍し、アメリカ各地や他国の基地を転々としました。

'Mission from God'
by James Meredith with William Doyle (ATRIA Books, 2012, $25.00)

「私がミシシッピ州の白人至上主義に攻撃を加える最初のプランを考えたのは空軍にいた時だった。自分が何をしたいかだけでなく、それをどう実行するかを決定した。そのプロセスは日本において完成の域に達したと云ってよい。私は軍曹としての三年間(1957〜1960)を、世界最大の空軍基地である立川で過ごした。この三年が私を変えた。日本こそ私を人間にした場所である。

日本滞在は完璧に凄い体験だった。三年間、私は勤務のない時、日本の各地を旅した。田舎の細道を歩き、博物館を訪れ、山登りをして空気を吸い込み、食べ物を食べ、人々との交流を満喫した。私は日本の文化の多くの面に、私が両親から教えられたこと(誇り、自然を敬う心、勤勉性、そして家族の尊厳など)について、個人的な類似点を見出した。

白人至上主義とアメリカの黒人の劣った地位は自然に形成されたものではなく、人間によって作られたものであることに気づかされたのも日本においてであった。日本で私が人間として劣っていると感じたことは一度もなかった。相手が黒人だという異なった態度を感じなかった唯一の場所であった。そこは完全に異なる世界、私が尊敬され平等に扱われた、非白人による、千年の文化を持つ世界であった。そういう文明国においては、白人至上主義などというものは馬鹿げていて存在するに値しない概念に過ぎなかった。

その一面は、日本文化に深く染み込んだ自然な礼儀に根ざすもので、第二次大戦後の駐留兵たちへのよそよそしいとはいえ礼儀正しかった態度と同じであることに疑問の余地はない。だが、日本での生活は、人間関係とは人間によって作られるものであり、したがって、私が人間である限り人間関係は変えることが出来るものだということを確信させてくれた。

ある日、鬱蒼とした松林と澄んで冷たい流れに沿って田舎道を歩きながら、私はミシシッピに戻ったような感覚に襲われてぎょっとなった。空気は甘く、黒いカラスが全く以て故郷を思い起こさせたのだ。

日本人の少年が私と並んで歩き始め、英語の練習をしようとした。彼は私がアメリカ南部から来たことに驚いた。彼はそこが黒人にとって恐ろしい土地であると聞いていたからだ。私も、少年がアメリカの歪められた人種的均衡についてよく知っていることにショックを受けた。また、日本の少年がLittle Rock(リトル・ロック)の九人や迫害の犠牲者Emmet Till(エメット・ティル)の物語に詳しいことにもびっくりさせられた。

私は恥じ入った。白人至上主義が私の祖国と私個人に浴びせている汚れと不名誉によって…。そして、私はその瞬間に、ものごとをいい方向に変えるべくミシシッピに帰る決心をした。その時、私は空軍を除隊しなければならないこと、ミシシッピに戻らなければならないこと、そして戦いを挑まねばならないことを実感したのだ。

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