【詳細 1】

次のような本を見つけました。1957年のセントラル・ハイの危機的状況を記録し続けた新聞カメラマンが、その40年後の記念式典前後の記録と合わせて出版した写真集です。

[Moment]

'A Life is More Than a Moment'
by Will Counts et al. (Indiana University Press, 1999, $29.95)

表紙は右に涙をこらえて歩き続けるElizabeth Eckford、後ろに彼女について歩きながら"nigger"呼ばわりしている白人女子高校生。後に、この白人の娘はセントラル・ハイに通っていたHazel Bryan(ヘイゼル・ブライアン)と分ります。

Hazel Bryanは日曜の朝と夜、そして水曜の夜も教会に通うような真面目な女の子でした。「教会の誰かが人種統合に反対しろと云ったわけではないけど、そうするのがいいように感じたの」と、彼女は述懐しています。

Hazel Bryanの両親は黒人生徒との統合教育を嫌い、近くの白人だけの高校に娘を転校させました。彼女が結婚し、三人の子供を育てた頃、Hazel Bryanはセントラル・ハイでの行動が間違いで、Elizabeth Eckfordに途方も無い不当な仕打ちをしたように感じました。どう償いをすべきか熟考し、1963年にElizabeth Eckfordに電話し、謝罪しました。

Hazel Bryanは夫にも家族にもそのことを話しませんでした。そして、写真に写っている自分がまだそのままそこに囚われているような気がしたそうです。

1997年、セントラル・ハイ事件40周年にあたりメディア各社はHazel Bryanを探し出しインタヴューすることになりました。Will Counts(ウィル・カウンツ、写真集のカメラマン)はElizabeth Eckfordに「Hazel Bryanと会いたいか?」と聞き、「ずっと会いたかったのよ」という答えを貰い、彼と妻は二人の対面の場を設定しました。Elizabeth Eckfordの家で三人は打ち解けて会話し、翌日二人がセントラル・ハイをバックに立っている写真を撮影しました(写真集に掲載されています)。その後、Elizabeth EckfordとHazel Bryanはメディア抜きで時々ランチを共にしているという話です。うそのような本当の話です。

書名の'A Life is More Than a Moment'は「人生は一瞬のものではない」と読めます。カメラにとらえられた醜いHazel Bryanも人間が変わりました。つまり、《ほんの一瞬だけで人間を判断してはいけないよ》というメッセージなのでしょう。

【閉じる】





Copyright (C) 2002-2004 高野英二 (Studio BE)
Address: 421 Willow Ridge Drive #7, Meridian, Mississippi, U.S.A.